「手に職をつけたい」と思っている方へ
「このまま今の仕事を続けていて大丈夫だろうか」
そんなふうに考えたことがある方は、少なくないと思います。景気に左右されにくくて、長く続けられて、社会の役に立つ仕事。そういう仕事を探しているなら、介護の世界には「医療的ケア」という、ひとつの確かな武器になる資格があります。
この記事では、医療的ケアの資格とは何か、どうやって取るのか、取ったら何が変わるのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。介護の経験がない方でも読めるように書いていますので、気軽に読んでみてください。
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そもそも「医療的ケア」って何?
2つのケアを覚えればOK
医療的ケアと聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれません。でも、介護の現場で「医療的ケア」と呼ばれているものは、大きく分けると2つです。
- - 喀痰吸引(かくたんきゅういん):たんを自分で出せない方の口や鼻、気管カニューレ(のどに開けた穴に入れる管)からたんを吸い取るケア
- - 経管栄養(けいかんえいよう):口から食べることが難しい方に、チューブを通して栄養を届けるケア(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養など)
どちらも、自分の力で「たんを出す」「食事をとる」ということが難しい方にとって、生活を続けていくために欠かせないケアです。
なぜ「医療的」ケアと呼ぶのか
たんの吸引も経管栄養も、体の中に器具を入れて行う行為です。やり方を間違えると、感染症や誤嚥(ごえん:食べ物や液体が気管に入ってしまうこと)などのリスクがあります。そのため、もともとは医師や看護師しか行えない「医療行為」とされていました。
つまり「医療的ケア」という名前がついているのは、医療行為に近い、慎重さが求められるケアだからです。
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介護職員でもできるようになった経緯
以前は看護師だけの仕事だった
かつて、たんの吸引や経管栄養は、法律上、医師・看護師にしか認められていませんでした。しかし、在宅で暮らす重い障害のある方や高齢者が増えるなかで、「看護師がいないとたんを吸引できない」という状況は、現実的に大きな壁になっていました。
家族が見よう見まねでケアをしていたり、看護師の訪問を待つ間に苦しい思いをする方がいたり。現場では切実な問題でした。
2012年の法改正で道が開いた
この問題を受けて、2012年(平成24年)に社会福祉士及び介護福祉士法が改正されました。一定の研修を修了し、都道府県に登録すれば、介護福祉士や介護職員でも喀痰吸引と経管栄養を行えるようになったのです。
これが「喀痰吸引等研修」と呼ばれる制度です。
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喀痰吸引等研修の種類
研修には第1号、第2号、第3号の3つの区分があります。それぞれ対応できる範囲が違いますので、順番に説明します。
第1号研修
- - 対応できる行為:喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)のすべて
- - 特徴:不特定多数の方(どなたに対しても)にケアを行える
- - 向いている方:幅広い現場で働きたい方、施設勤務を考えている方
第2号研修
- - 対応できる行為:喀痰吸引と経管栄養のうち、自分が選択した一部の行為
- - 特徴:不特定多数の方に対して、選択した行為を行える
- - 向いている方:必要な行為が限られている現場で働く方
第3号研修
- - 対応できる行為:喀痰吸引と経管栄養のすべての行為が対象になり得るが、特定の利用者さんに対してのみ行える
- - 特徴:「この利用者さんに対して、このケアを行う」という形で、個別に実地研修を受けて認定される
- - 向いている方:在宅の重度訪問介護など、担当する利用者さんが決まっている現場で働く方
どれを選べばいいの?
迷ったときは、自分が働く(または働きたい)現場に合わせて選ぶのが基本です。
重度訪問介護の現場では、担当する利用者さんが決まっていることが多いため、第3号研修から始めるケースがよく見られます。第3号研修は、第1号・第2号に比べて研修時間が短いため、働きながらでも取り組みやすいという利点もあります。
もちろん、将来的にさまざまな現場で活躍したいなら、第1号研修を目指すのもよい選択です。
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研修の内容と期間
研修の流れ
どの区分でも、基本的な流れは「座学(講義)→ 演習(シミュレーター等での練習)→ 実地研修(実際の利用者さんへのケア)」です。
座学(基本研修)では、以下のようなことを学びます。
- - 人体の仕組み(呼吸器、消化器の基礎)
- - 感染予防の考え方
- - 喀痰吸引の手順と注意点
- - 経管栄養の手順と注意点
- - 緊急時の対応
- - 利用者さんの尊厳と倫理
座学で基礎を学んだあと、シミュレーター(人体模型)を使った演習で手順を繰り返し練習します。実際に器具を使って、正しい手順が身につくまで何度も行います。
実地研修では、指導者(医師や看護師)の立ち会いのもと、実際の利用者さんに対してケアを行います。決められた回数を問題なくこなせれば、研修修了となります。
期間の目安
- - 第1号研修:座学・演習で約50時間+実地研修。トータルで数ヶ月かかることが多いです
- - 第2号研修:選択する行為の数によりますが、第1号より短くなります
- - 第3号研修:座学は約9時間(1〜2日程度)+演習+実地研修。比較的短期間で修了できます
実地研修の期間は、研修先の状況や利用者さんの体調によって変わるため、一概には言えません。ただ、第3号研修であれば、働きながら数週間〜1ヶ月程度で取得できるケースが多いです。
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費用について
自費で受ける場合の目安
研修機関によって異なりますが、おおよその目安です。
- - 第1号研修:15万〜20万円程度
- - 第2号研修:10万〜18万円程度
- - 第3号研修:3万〜8万円程度
テキスト代や実地研修先への交通費が別途かかる場合もあります。
事業所が費用を負担してくれるケースもある
ここが大事なポイントです。介護事業所のなかには、研修費用を事業所が全額または一部負担してくれるところがあります。
医療的ケアができるスタッフが増えることは、事業所にとってもメリットが大きいからです。特に重度訪問介護の事業所では、医療的ケアができるスタッフを必要としているため、資格取得を積極的にサポートしているケースが見られます。
「資格を取りたいけど、お金が心配」という方は、就職先を探すときに研修費用の補助があるかどうかを確認してみてください。
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資格を取ると何が変わる?
対応できるケアが増える
当たり前のことですが、これが一番大きな変化です。たんの吸引や経管栄養が必要な利用者さんに対応できるようになります。
特に在宅介護の現場では、「吸引ができるスタッフがいないから、この利用者さんを担当できない」ということが起こります。資格を取れば、そういった場面で力になれるようになります。
職場の選択肢が広がる
医療的ケアの資格を持っていると、応募できる求人が増えます。重度訪問介護の事業所はもちろん、特別養護老人ホームや障害者支援施設など、医療的ケアが必要とされる現場は増え続けています。
介護業界で長く働いていくうえで、「どこでも必要とされるスキル」を持っていることは、大きな安心材料になります。
給与アップの可能性
事業所によっては、医療的ケアの資格に対して手当がつく場合があります。金額は事業所や地域によって異なるため一概には言えませんが、資格を持っていることが収入面でプラスに働くケースは少なくありません。
自信がつく
これは目に見えにくい変化ですが、意外と大きいです。「自分にはこのスキルがある」と思えることは、日々の仕事に向き合うときの支えになります。利用者さんやご家族からの信頼にもつながります。
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重度訪問介護と医療的ケアの関係
重度訪問介護は、重い障害のある方がご自宅で暮らし続けるためのサービスです。利用者さんのなかには、人工呼吸器を使っている方や、たんの吸引が頻繁に必要な方、胃ろうから栄養を摂っている方がいらっしゃいます。
つまり、重度訪問介護の現場では医療的ケアが「特別なこと」ではなく「日常」です。
だからこそ、この資格を持っているスタッフは現場で頼りにされます。利用者さんが安心して夜を過ごせるかどうかは、そばにいるスタッフが適切にケアできるかどうかにかかっています。
ノベラクトケア(株式会社Noveract)は、埼玉県川越市に本社を置き、さいたま市西区に事業所を構える重度訪問介護の事業所です。24時間365日、利用者さんの暮らしを支えています。全スタッフが医療的ケアの資格を保有しています。
これは「うちはすごいでしょう」という話ではなく、利用者さんの安全を考えたら当然のことだと思っているからです。誰がシフトに入っても対応できる体制をつくるために、スタッフの資格取得をサポートしています。
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興味がある方へ
「医療的ケアの資格、ちょっと気になる」
そう思っていただけたなら、それだけで十分です。すぐに研修を受けなくても、まずは話を聞いてみるところから始めてみてください。
ノベラクトケアでは、資格取得に関する相談も受け付けています。「自分でも取れるのか」「費用はどうなるのか」「働きながら取れるのか」など、気になることがあればお気軽にお問い合わせください。
電話:048-871-6572
「手に職をつけたい」と思った、その気持ちを大事にしてほしいと思います。医療的ケアの資格は、介護の仕事を長く続けていくための、確かな一歩になるはずです。
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