「なんで私ばっかり…」——介護をしていると、そんな気持ちがふとこみ上げてくることがあります。
きょうだいや親戚がいるのに、介護の負担が自分一人に集中している。相手に悪気がないのはわかっていても、日々の疲れが積み重なると、やりきれなさや不満がたまってしまうのは自然なことです。
この記事では、家族間で介護の分担がうまくいかないときに役立つ、話し合いのコツと頼れる相談先についてお伝えします。もめてしまう前に、少しでもヒントになれば幸いです。
介護の負担が一人に集中してしまう問題
障害のあるご家族の介護は、何年、何十年と続くことがあります。最初は「自分がやるしかない」と思って始めた介護も、長く続くうちに心や体に大きな負担がかかってきます。
ところが、その大変さは、実際に介護をしていない家族にはなかなか伝わりません。
- - 「たまに顔を見せに来るだけの兄が、偉そうにアドバイスだけしていく」
- - 「遠くに住んでいる姉は、電話で『大変だね』と言うだけ」
- - 「お金の話をしたいのに、きょうだいが話し合いを避ける」
こうした不満は、介護をしているご家族からよく聞かれる声です。最初は我慢できても、年月が経つにつれて、家族関係そのものにひびが入ってしまうこともあります。
大切なのは、問題が深刻になる前に、話し合いの場をつくることです。
なぜもめる?よくあるパターン
家族間で介護の分担がうまくいかない背景には、いくつかの典型的なパターンがあります。
パターン1:物理的な距離
きょうだいが遠方に住んでいると、日常的な介護に関わることが物理的に難しくなります。自然と近くに住んでいる人に負担が集中します。
遠くにいる家族は「行きたくても行けない」という気持ちを抱えていることもありますが、近くで介護をしている側からすると、「結局こっちに全部押し付けられている」と感じやすくなります。
パターン2:仕事や家庭の事情
「仕事が忙しいから」「自分にも子どもがいるから」——それぞれに事情があるのは当然です。でも、介護をしている本人にだって仕事や生活があります。
お互いの事情を「言い訳」として受け取ってしまうと、話し合いが感情的になりがちです。
パターン3:介護の大変さに対する認識のずれ
実際に介護をしていない家族は、どれくらいの時間や労力がかかっているか正確に把握していないことが多いです。
「ヘルパーさんが来てくれてるんでしょ?」「そんなに大変なの?」という悪気のないひと言が、介護者を深く傷つけてしまうこともあります。
パターン4:お金の問題
介護にはお金がかかります。サービスの自己負担分、日用品、通院の交通費——細かい出費が積み重なります。
費用の負担をどう分けるかという話は、どうしても切り出しにくいものです。お金の話を避けているうちに、不公平感がどんどん大きくなってしまうことがあります。
話し合いの前に整理しておくこと
家族で話し合う前に、今の状況を「見える化」しておくことが大切です。
感情的に「こんなに大変なの!」と訴えても、相手にはなかなか伝わりません。具体的な情報を整理しておくと、話し合いがずっとスムーズになります。
介護の内容を書き出す
今、どんなケアを行っているのか、一日の流れを書き出してみましょう。
- - 朝の起床介助、着替え、食事の準備
- - 日中の見守り、トイレの介助、体位変換
- - 通院の付き添い(月に何回、何時間かかるか)
- - 夜間の対応(何回起きるか)
- - ヘルパーさんとの連絡調整、ケアマネージャーとの打ち合わせ
こうして書き出してみると、「思っていた以上にたくさんのことをしている」と自分でも気づくことがあります。
時間を記録する
介護に費やしている時間を、1週間だけでもざっくり記録してみてください。「朝の準備に1時間」「通院で半日」「夜中に2回起きる」など、だいたいの数字で構いません。
数字にすることで、「1日のうちこれだけの時間を介護に使っている」ということが客観的に伝わりやすくなります。
費用を整理する
介護にかかっているお金を月単位で整理しましょう。
- - 障害福祉サービスの自己負担額
- - おむつなどの消耗品
- - 通院の交通費
- - 介護食や特別な食材の費用
- - その他(住宅改修のローンなど)
レシートや明細を集めておくと、話し合いのときに役立ちます。
話し合いの3つのコツ
準備ができたら、いよいよ話し合いです。以下の3つのことを意識すると、感情的なぶつかり合いを防ぎやすくなります。
コツ1:相手を責めない
「なんで何もしてくれないの」「あなたは楽でいいよね」——こういった言葉は、たとえ本心であっても、相手を defensive(防御的)にさせてしまいます。
代わりに、「私は」を主語にして気持ちを伝える方法が有効です。
- - ×「あなたは何もしてくれない」
- - ○「私は最近、体力的にきつくなってきている」
相手を攻撃するのではなく、自分の状況を伝えることで、相手も聞く姿勢になりやすくなります。
コツ2:具体的にお願いする
「もっと手伝って」と言うだけでは、相手は何をすればいいかわかりません。できるだけ具体的に、選択肢を示してお願いするのがポイントです。
- - 「月に1回、通院の付き添いをお願いできない?」
- - 「ヘルパーさんとの連絡は引き受けてもらえると助かる」
- - 「直接の介護が難しいなら、費用の一部を負担してもらえない?」
具体的であればあるほど、相手も「それならできるかも」と考えやすくなります。
遠方に住んでいるきょうだいでも、電話での見守り、役所への問い合わせ、書類の手続き、費用の負担など、距離に関係なくできることはあります。
コツ3:お金のことも正直に話す
お金の話は気まずいものですが、避ければ避けるほど問題は大きくなります。
先ほど整理した費用のデータを見せながら、「毎月これくらいかかっている」と事実を共有するところから始めましょう。
費用の分担方法は家族によってさまざまです。均等に割る場合もあれば、収入に応じて比率を変える場合もあります。「正解」はありませんが、全員が納得できる形を一緒に考えることが大切です。
外部サービスを入れると家族関係が楽になることがある
ここまで家族間の話し合いについてお伝えしてきましたが、もうひとつ大切な視点があります。
それは、介護の負担そのものを減らすということです。
「家族だけで頑張らなければ」と思い込んでいると、分担の話し合い自体がつらくなります。しかし、障害福祉サービスを上手に使えば、家族一人ひとりの負担を軽くすることができます。
たとえば、重度訪問介護を利用して日中のケアをヘルパーに任せることで、主介護者が休息をとったり、仕事を続けたりすることが可能になります。
外部のサービスが入ることで、「全部を家族で分担しなければならない」というプレッシャーが減り、結果として家族の関係も穏やかになることがあります。
「家族で話し合って分担を決める」ことと、「使えるサービスを使って負担を減らす」こと。この2つは、どちらか一方ではなく、両方を同時に考えるのがおすすめです。
第三者に間に入ってもらう方法
「家族だけで話し合うと、どうしても感情的になってしまう」——そんなときは、第三者に間に入ってもらうという方法があります。
相談支援専門員に相談する
相談支援専門員とは、障害福祉サービスの利用計画を一緒に考えてくれる専門職です。ご本人のケアだけでなく、ご家族の状況も含めた相談に乗ってくれます。
「家族間の分担がうまくいかない」「他にどんなサービスが使えるか知りたい」といった相談も対象です。中立的な立場からアドバイスをもらえるので、家族だけでは話しにくかったことも整理しやすくなります。
相談支援専門員は、お住まいの市区町村の障害福祉課に問い合わせると紹介してもらえます。
ケアマネージャー(介護支援専門員)に相談する
ご家族が介護保険の対象(65歳以上、または特定疾病のある40〜64歳の方)で、すでにケアマネージャーがついている場合は、ケアマネージャーに相談するのも有効です。
ケアマネージャーは多くの家族のケースを見てきた経験がありますので、「他のご家庭ではこうしていますよ」といった具体的な情報を教えてもらえることもあります。
家族会議にサービス提供事業所のスタッフを招く
ヘルパー事業所の管理者やサービス提供責任者に、家族の話し合いに同席してもらうことも一つの方法です。
日常的にケアに入っているスタッフは、ご本人の状態や介護の実態をよく知っています。家族だけでは「どれくらい大変か」が伝わりにくいとき、専門職の口から説明してもらうことで、共通認識をつくりやすくなります。
一人で抱え込まないでください
介護の分担がうまくいかないと、「もういいや、自分がやるしかない」とあきらめてしまう方もいらっしゃいます。でも、その我慢はいつか限界を迎えます。
ご自身が倒れてしまったら、介護そのものが成り立たなくなります。
完璧に分担できなくても構いません。100点の話し合いができなくても構いません。少しでも状況が良くなる一歩を踏み出すことが大切です。
お問い合わせ
介護の負担やご家族との関係にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
ノベラクトケア(株式会社Noveract)は、川越市本社・さいたま市西区事業所を拠点に、重度訪問介護サービスを24時間365日提供しています。サービスの利用方法や、ご家族の負担を減らす方法についてもご相談いただけます。
まずはお電話でお話をお聞かせください。
電話番号:048-871-6572(24時間365日対応)
