「自分がいなくなったら、この子はどうなるのだろう」
重い障害のあるお子さまを育てているご家族の多くが、一度はこうした不安を感じたことがあるのではないでしょうか。毎日の介護やケアに追われながらも、ふとした瞬間に頭をよぎる将来への心配。それはとても自然な気持ちです。
この記事では、「親なきあと」に備えて今からできること、使える支援制度、相談先についてまとめました。すべてを一度に準備する必要はありません。「こんな制度があるんだ」と知っておくだけでも、少し気持ちが楽になるかもしれません。
「親なきあと」の不安を抱えているのは、あなただけではありません
「親なきあと」という言葉は、障害のあるお子さまの親御さんの間でよく使われる言葉です。親が高齢になったとき、病気になったとき、あるいは亡くなったあと、子どもの生活は誰が支えるのかという問題を指しています。
この不安を感じること自体は、お子さまのことを大切に思っているからこそです。決しておかしなことではありません。
ただ、「考えるのがつらい」「何から手をつければいいかわからない」という理由で、つい先送りにしてしまう方も多いのが現実です。
大切なのは、完璧な準備をすることではなく、少しずつ備えを始めることです。今からできることを、3つの視点でご紹介します。
今からできる3つの備え
将来に向けた備えは、大きく分けて次の3つがあります。
- - ①サービスに慣れておく — 本人が家族以外の人のケアを受けることに慣れる
- - ②相談支援の体制をつくる — 信頼できる相談先を確保しておく
- - ③お金の準備をする — 使える制度を知り、経済的な不安を減らす
一つずつ、具体的に見ていきましょう。
①サービスに慣れておく
「家族以外の人にケアしてもらう」経験が大切です
ずっとご家族がケアをされてきた場合、お子さま本人が「家族以外の人のケア」に慣れていないことがあります。これは自然なことですが、将来を考えると、少しずつ外部のサポートに慣れておくことがとても大切です。
親御さんが元気なうちに、お子さまとヘルパーさんとの信頼関係を築いておくことで、万が一のときにもスムーズに支援を受けられます。
重度訪問介護を使ってみる
重度訪問介護は、重い障害のある方がご自宅で長時間の支援を受けられる障害福祉サービスです。身体介護、家事援助、見守り、外出の付き添いなどを、一人のヘルパーが連続して行います。
最初から長時間利用する必要はありません。まずは短い時間から始めて、お子さまとヘルパーさんが少しずつ関係を築いていくことができます。
親御さんが在宅中に利用を始めれば、お子さまの好みや体調の変化、コミュニケーションの取り方などをヘルパーに伝えることもできます。「引き継ぎ」の期間を十分にとれるというのは、元気なうちに始める大きなメリットです。
ショートステイ(短期入所)も選択肢のひとつ
ショートステイとは、障害者支援施設などに短期間(数日程度)宿泊できるサービスです。親御さんの体調不良や冠婚葬祭など、一時的にケアが難しいときに利用できます。
それだけでなく、お子さまが「自宅以外の場所で過ごす」経験にもなります。定期的に利用することで、ご本人も環境の変化に慣れていくことができます。
ショートステイも障害福祉サービスの一つで、利用者負担は原則1割(所得に応じた月額上限あり)です。市区町村の障害福祉課で申請できます。
②相談支援の体制をつくる
相談支援専門員という存在
障害福祉の世界には、相談支援専門員という専門職がいます。この方は、お子さまの生活全体を見ながら、どんなサービスをどれくらい使うか計画を立ててくれる人です。
具体的には、以下のようなことをしてくれます。
- - お子さまに合った福祉サービスの提案
- - サービス等利用計画(どのサービスをどう使うかの計画書)の作成
- - サービス事業者との連絡調整
- - 定期的な見直し(モニタリング)
相談支援専門員は、親御さんとお子さまの間に立って、長期的に伴走してくれる存在です。親御さんの負担が大きくなったとき、まず相談できる先として、早いうちにつながっておくことをおすすめします。
相談支援は無料で利用できます。お住まいの市区町村の障害福祉課に問い合わせると、地域の相談支援事業所を紹介してもらえます。
成年後見制度を知っておく
成年後見制度とは、判断能力が十分でない方の権利や財産を守るための法律上の仕組みです。
たとえば、お子さまが知的障害や精神障害により、ご自身で契約や金銭管理をすることが難しい場合、家庭裁判所が選んだ「後見人」がお子さまに代わってこれらを行います。
成年後見制度には2つの種類があります。
- - 法定後見 — すでに判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所に申し立てて後見人を選んでもらう
- - 任意後見 — まだ判断能力があるうちに、「将来この人に後見人になってほしい」と本人が契約しておく
親御さんが元気なうちに、どちらの制度が合っているか、どのタイミングで申し立てるかを知っておくだけでも大きな安心につながります。
成年後見制度の相談は、お住まいの地域の権利擁護センターや社会福祉協議会、弁護士・司法書士などに相談できます。費用が心配な場合には、法テラス(日本司法支援センター)の無料相談も利用できます。
③お金の準備をする
将来の生活を考えるうえで、経済的な備えも重要です。障害のある方が使える経済的支援制度はいくつかあります。「すべて自費で備えなければ」と思う必要はありません。
障害年金
障害年金は、障害の状態にある方が受け取れる公的年金です。20歳になると申請できます(初診日が20歳前の場合)。
- - 障害基礎年金1級 — 年額約101万円(2025年度)
- - 障害基礎年金2級 — 年額約81万円(2025年度)
受給には、障害の程度に関する医師の診断書と、年金事務所への申請が必要です。申請手続きが複雑に感じる場合は、社会保険労務士に相談することもできます。
特別障害者手当
特別障害者手当は、日常生活で常時特別な介護が必要な、20歳以上の在宅の重度障害者に支給される手当です。
- - 月額約28,840円(2025年度)
- - 所得制限あり
施設に入所している方や、3か月以上入院している方は対象外となります。市区町村の障害福祉課で申請できます。
心身障害者扶養共済制度
あまり知られていませんが、心身障害者扶養共済制度という公的な保険のような仕組みがあります。
これは、障害のあるお子さまを扶養している保護者が毎月掛金を払い、保護者が亡くなったりしたときにお子さまに年金が支給されるという制度です。
- - 加入者(保護者)が死亡または重度障害になった場合、障害のあるお子さまに月額2万円(2口加入で月額4万円)が生涯にわたって支給される
- - 掛金は加入時の年齢によって異なる(若いほど安い)
- - 掛金は所得控除の対象になる
都道府県・政令指定都市の窓口で加入できます。早めに加入するほど掛金が安くなるため、検討する価値のある制度です。
生活保護
他の収入や支援を活用しても生活が難しい場合には、生活保護を受けることもできます。生活保護は「最後の手段」というイメージがあるかもしれませんが、障害のある方が安定した生活を送るために正当に利用できる制度です。
障害年金を受給していても、それだけでは生活費が足りない場合には、差額分を生活保護で補うことが可能です。
グループホームという選択肢
将来の暮らしの場として、グループホーム(共同生活援助)という選択肢もあります。
グループホームは、障害のある方が少人数で共同生活を送る住まいです。世話人やスタッフが日常生活の支援を行い、食事や入浴、健康管理などのサポートを受けながら暮らせます。
- - 数人〜10人程度の少人数で生活する
- - 日中は就労支援事業所や生活介護事業所に通う方も多い
- - 利用料は障害福祉サービスの枠組みで、所得に応じた負担
- - 重度の障害がある方向けの日中サービス支援型グループホームもある
「自宅で暮らし続けること」だけが選択肢ではありません。お子さまに合った環境を、時間をかけて探していくことも立派な備えです。
見学を受け付けているグループホームも多いので、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。相談支援専門員に相談すれば、地域のグループホームの情報を教えてもらえます。
将来のことを考えるのは、つらいけれど
「親なきあと」のことを考えるのは、精神的にとてもつらいことです。「まだ先のこと」と思いたくなるのは当然ですし、今の介護で手いっぱいという方も多いでしょう。
でも、少しずつでも備えを始めておくことで、将来への漠然とした不安は、具体的な「やるべきこと」に変わります。そして、それは親御さん自身の安心にもつながります。
すべてを一度に完璧にする必要はありません。
- - まずは一つだけ、サービスを使ってみる
- - まずは相談支援事業所に連絡してみる
- - まずは障害年金の受給要件を確認してみる
小さな一歩が、大きな安心の土台になります。
まずは相談するところから
何から手をつけたらいいかわからない場合は、まず誰かに話してみることが大切です。お住まいの市区町村の障害福祉課や、地域の相談支援事業所に相談すれば、お子さまの状況に合った制度やサービスを一緒に考えてもらえます。
ノベラクトケア(株式会社Noveract)は、埼玉県で重度訪問介護サービスを提供しています。川越市に本社、さいたま市西区に事業所を構え、24時間365日の支援体制を整えています。全スタッフが医療的ケアの資格を保有しており、医療的ケアが必要なお子さまへの対応も可能です。
「まだ利用するかわからないけど、話だけ聞いてみたい」というご相談も歓迎しています。
お電話でのご相談:048-871-6572
お子さまの将来について、一緒に考えるお手伝いができればと思っています。
