「認定調査の日、何を聞かれるかは分かったけれど、家族が横で何を伝えればいいのか分からない」——障害支援区分の認定調査で聞かれる80項目|家族が知っておきたい答え方の基準を読んだ後、こうしたご相談を続けていただくことがよくあります。80項目そのものの答え方はイメージできても、認定調査員が実際に記入している「概況調査票」と「特記事項」という2つの書類が何なのか、そこにご家族の話がどう反映されるのかは、あまり知られていません。

先に、要点をまとめます。

  • 概況調査票は、80項目の点数評価では拾いきれない生活背景(外出頻度・就労状況・介護者の健康状態・居住環境など)を記入する書類です(出典: 厚生労働省「認定調査員マニュアル」概況調査票様式)
  • 特記事項は、80項目それぞれについて「なぜその選択肢を選んだか」の具体的な根拠を記載する欄で、市町村審査会の二次判定に直接使われます(出典: 同マニュアル「特記事項の拡充」)
  • ご家族が調査当日に具体的なエピソードを言葉にして伝えることが、特記事項の質を左右します。数値化できない「日によって違う」「家族が支えているから何とかできている」という実態は、特記事項を通じてしか審査に届きません

この記事の後半では、「調査員に事前に何を準備しておけば、当日うまく伝えられるか」という、多くのご家族が最後に迷うポイントについても具体的に触れます。

概況調査票と特記事項が二次判定にどう反映されるかを示す図解。概況調査票が生活背景を、認定調査80項目の特記事項が個別の根拠を、それぞれ市町村審査会の二次判定に届ける流れを表す。
概況調査票と特記事項が二次判定にどう反映されるかを示す図解。概況調査票が生活背景を、認定調査80項目の特記事項が個別の根拠を、それぞれ市町村審査会の二次判定に届ける流れを表す。

概況調査票とは何を書く書類?

認定調査員が、80項目の点数評価だけでは伝わらない生活全体の状況を記録する書類です。障害等級・現在利用中のサービス・外出頻度・就労状況・介護者の健康状態・居住環境などを10項目にわたって記入します。

障害支援区分の認定調査は、大きく分けて「認定調査項目(80項目)」と「概況調査票」の2つの書類で構成されています。障害支援区分の認定調査で聞かれる80項目|家族が知っておきたい答え方の基準で扱った80項目は、寝返りや食事、意思疎通、行動障害など個別の動作・状態を点数化する調査です。これに対して概況調査票は、その人がどんな暮らしをしているのかという「背景情報」をまとめる書類にあたります。

厚生労働省の認定調査員マニュアルに掲載されている概況調査票の様式を見ると、記載項目は次の10項目です(出典: 同マニュアル「概況調査票(様式)」)。

  1. 調査実施者(記入者) — 実施日・実施場所・記入者の所属機関
  2. 調査対象者 — 氏名・性別・生年月日・現住所・家族等連絡先
  3. 認定を受けている各種の障害等級等 — 身体障害者手帳等級、療育手帳等級、精神障害者保健福祉手帳等級、難病等疾病名、障害基礎年金等級、生活保護の受給有無など
  4. 現在受けているサービスの状況 — 別紙「サービスの利用状況票」に記入
  5. 地域生活関連 — 外出の頻度(過去1ヶ月間の回数)、社会活動の参加状況、過去2年間の入所歴・入院歴の有無
  6. 就労関連 — 就労状況、就労経験の有無、就労希望の有無
  7. 日中活動関連 — 主に活動している場所(自宅・施設・病院・その他)
  8. 介護者(支援者)関連 — 介護者の有無、介護者の健康状況等特記すべきこと
  9. 居住関連 — 生活の場所(自宅単身・自宅家族等同居・グループホーム・病院・入所施設など)、居住環境
  10. その他 — サービスの種類や量に関することを中心に記入

この一覧を見ると分かるとおり、概況調査票は「支援の必要度」を直接点数化するものではありません。むしろ、市町村審査会が二次判定を行う際に、80項目の点数評価だけでは見えてこない生活の全体像を補う役割を果たしています。特に8番目の「介護者(支援者)関連」欄は、ご家族の状況が直接反映される数少ない項目です。「介護者の健康状況等特記すべきこと」という欄があることからも分かるとおり、ご家族自身の体調や負担の実情を伝える機会として位置づけられています。

なお、概況調査票の記入自体は認定調査員が行うものであり、ご家族が直接書き込む書類ではありません。ただし、記入内容の元になる情報は、調査当日にご家族が伝えた内容がベースになります。この記事の後半で扱う「調査当日の伝え方」が重要になるのは、このためです。

特記事項とは何のために書かれるもの?

80項目それぞれについて「なぜその選択肢を選んだか」の具体的根拠を記載する欄です。点数だけでは伝わらない個別の事情を市町村審査会に届け、一次判定(コンピュータ判定)を二次判定で補正するための資料になります。

障害支援区分の判定は、認定調査の結果と医師意見書をもとにコンピュータが機械的に一次判定を行い、その一次判定を原案として、特記事項と医師意見書の一部項目を踏まえて市町村審査会が二次判定を行うという2段階の仕組みです(出典: 厚生労働省「認定調査員マニュアル」審査判定プロセス)。

つまり、一次判定は「選択肢」だけで機械的に算出される数値であるのに対し、二次判定は「選択肢+特記事項+医師意見書」を人が総合的に見て判断するという違いがあります。ここに特記事項の役割があります。

特記事項に何を書くかについては、2014年の制度見直しで大きな拡充が行われました。従来は認定調査項目に関することのみが記載対象でしたが、見直し後は「認定調査の際に、調査対象者に必要とされる支援の度合いに関することで確認できた事項」であれば、認定調査項目に直接該当しない内容も記載できるようになっています(出典: 同マニュアル「特記事項の拡充」)。マニュアルが想定する記載事項の例として、次のようなものが挙げられています。

  • 思い込み、勘違い、固執行動等に対する支援に関すること
  • 妄想や幻覚(幻視幻聴)の有無や、それに対する支援に関すること
  • 犯罪行為の繰り返しに対する支援に関すること
  • 性的な問題行動に対する支援に関すること

これらはいずれも精神障害・知的障害・発達障害の分野を想定した例示ですが、身体障害の分野でも考え方は同じです。「80項目のどの選択肢にもきれいに当てはまらないが、日常的に大きな負担になっている事情」があれば、それを特記事項として言葉にできるかどうかが、実態に沿った判定につながるかどうかを左右します。

特記事項には具体的に何が書かれる?

認定調査項目と特記事項の記載内容に矛盾がないか、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載することが調査員に求められています。実際にどのくらいの分量・内容で書かれるかは調査員の裁量ですが、「選択の根拠」を具体的に書くことが基本です。

マニュアルでは、認定調査員が調査結果の確認を行う際の留意点として、次のように定めています(出典: 同マニュアル「調査結果の確認」)。

  • 認定調査員は調査対象者や支援者に、認定調査の結果で不明な点や選択に迷う点があれば再度確認する
  • 「特記事項」を記入するときは、認定調査項目と特記事項の記載内容に矛盾がないか確認し、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載するよう留意する
  • 市町村審査会事務局職員は事前に認定調査の結果を確認し、明らかな誤りや不明な点が認められる場合には、認定調査員に説明を求め、必要に応じて調査結果の変更や特記事項の加除修正を行う

また、「調査項目の確認方法」の項目では、実際に行為を行ってもらえなかった場合については、選択をした根拠について、具体的な内容を「特記事項」に必ず記載するとされています(出典: 同マニュアル)。たとえば「危険が伴うため実際の動作確認はせず、日頃の様子の聞き取りのみで判断した」というようなケースが該当します。

ここから読み取れるのは、特記事項は「思ったことを自由に書く欄」ではなく、「なぜその選択肢を選んだのか」という根拠を示すための欄だということです。調査員が判断に迷った場合や、選択肢どおりに評価しきれない事情がある場合ほど、特記事項の記載が判定の質を左右します。

調査当日、家族は何を伝えればいい?

「できたりできなかったりする」実態と、その頻度・きっかけ・介助の具体的な中身を、エピソードとして言葉にして伝えることが大切です。「日によって違う」という一言で終わらせず、直近の具体例を用意しておくと伝わりやすくなります。

前回の記事で扱ったとおり、障害支援区分の評価基準では「できたりできなかったりする場合」は「できない状況」に基づいて判断することになっています(出典: 厚生労働省「認定調査員マニュアル」判断基準の見直し)。しかし、この基準が正しく反映されるかどうかは、その「できない状況」が調査員にどれだけ具体的に伝わるかにかかっています。

マニュアルには、調査員が「調査対象者がリラックスして回答できるよう十分時間をかける」「会話だけでなく、手話や筆談、直接触れる等の方法も必要に応じて用いる」といった配慮を行うことが定められています(出典: 同マニュアル「質問方法や順番等」)。それでも、日々の介護の中で当たり前になっている出来事ほど、当日いざ聞かれると言葉に詰まってしまうことがあります。

ご相談いただく中でよくお聞きするのは、次のような伝え忘れのパターンです。

  • 「慣れた自宅だからできること」を、そのまま「できる」と答えてしまう:概況調査票の判断基準では、日常生活に関する項目は「自宅・単身の生活を想定して」評価することになっています。家族が近くにいて見守っているから成立している動作を、「本人一人でもできる」と誤解されるように伝えてしまうケースがあります
  • 医療的ケアの内容を「いつものこと」として省略してしまう:たんの吸引や経管栄養、人工呼吸器の管理などは、特別な医療に関する項目として評価されます(詳しくは人工呼吸器をつけても自宅で暮らせる?在宅生活を支える仕組みでも触れています)。回数や時間帯まで含めて具体的に伝えることで、日々の負担の実態が伝わりやすくなります
  • 介護者自身の体調のことを言い出せない:概況調査票の「介護者(支援者)関連」欄には、介護者の健康状況を特記すべきこととして記載する欄が用意されています。「自分(家族)の体調」を我慢して黙ってしまうと、この欄には何も反映されません

伝え方のコツとしては、「頻度」「きっかけ」「その後の対応」の3点をセットにして話すことが有効です。たとえば「夜間、月に数回、体位を変えるタイミングで痛みを訴えて目を覚ます。その都度、家族が体位交換とマッサージを行っている」というように、抽象的な感想ではなく、具体的な場面として伝えることで、特記事項に反映されやすくなります。

「抽象的な伝え方」と「具体的な伝え方」の違い

同じ実態でも、伝え方によって特記事項への反映のされやすさは変わります。次のような違いを意識しておくと、当日の会話がスムーズになります。

| 場面 | 抽象的な伝え方(反映されにくい) | 具体的な伝え方(反映されやすい) |
|---|---|---|
| 食事の様子 | 「食事はだいたい大丈夫です」 | 「刻み食であれば自分でスプーンを使えるが、むせ込みが週に2〜3回あり、その都度家族が背中をさすって様子を見ている」 |
| 夜間の様子 | 「夜もときどき大変です」 | 「人工呼吸器のアラームで週に3〜4回起き、家族が対応している。1回あたり15〜20分ほどかかる」 |
| 外出の様子 | 「あまり外出できていません」 | 「通院以外での外出は月1回程度。移動には家族の付き添いと車いすでの乗降介助が毎回必要」 |
| 意思疎通の様子 | 「会話は普通にできます」 | 「聞き取れる話し方だが、初対面の人には聞き取りにくいと言われることが多く、家族が間に入って説明することが多い」 |

表の右側のように、回数・頻度・所要時間・誰が何をしているかまで含めて話すと、調査員がそのまま特記事項に書き起こしやすくなります。逆に「大丈夫です」「なんとかやっています」という言葉だけで終わってしまうと、実際には家族の負担が大きくても、選択肢上は「支援が不要」に近い評価になってしまうことがあります。

認定調査に納得できない結果が出たときは?

認定調査項目と医師意見書の選択基準は異なるため、両者の結果が一致しないこともあり得ます。それ自体は制度上の想定内ですが、実態と大きくかけ離れた区分が出た場合は、再申請や不服申立て(審査請求)という選択肢があります。

厚生労働省のマニュアルでも「認定調査項目と医師意見書の記載内容とでは選択基準が異なるものもあるため、類似の設問であっても、両者の結果が一致しないこともあり得る」と明記されています(出典: 同マニュアル「医師意見書との関係性」)。つまり、認定調査の結果と医師の意見が食い違うこと自体は、制度上ある程度織り込まれている仕組みです。

とはいえ、実際の生活実態から見て「この区分では必要な支援が受けられない」と感じるケースもあります。そうした場合の進め方については、別の記事で詳しく整理する予定です。まずは、認定結果の通知に記載されている内容と、調査当日に自分たちが伝えた内容を照らし合わせ、「伝えたはずのことが特記事項に反映されているか」を振り返ってみることが最初の一歩になります。

振り返る際の具体的な手順としては、次の3ステップが目安になります。

  1. 通知された区分と、認定調査の当日に自分たちが伝えたつもりの内容を照らし合わせる:特に医療的ケアの頻度、夜間の対応回数、外出の制約など、数値化しやすい部分から確認します
  2. 市町村の障害福祉課の窓口で、認定結果について問い合わせる:区分認定の結果に疑問がある場合、まずは制度上の相談窓口である市町村に確認するのが基本の流れです
  3. 相談支援専門員に、次回更新調査に向けた準備を相談する:障害支援区分の認定調査は一度きりではなく、更新のたびに行われます。次回に向けて、日々の介助記録を残しておくと、伝え忘れを防ぎやすくなります

認定調査は、多くの方にとって数年に一度しか経験しない手続きです。1回の調査だけで完璧に伝えきるのは難しいことも多いため、「今回うまく伝えられなかったことは、次回への申し送りとして記録しておく」という考え方も現実的です。

埼玉県内で認定調査を控えているご家族へ

ここまで、概況調査票と特記事項という2つの書類の役割について整理してきました。制度としての仕組みを理解しておくことは大切ですが、実際の調査当日には「何をどう伝えればいいか分からず、後から『あのことも言えばよかった』と感じた」というお声もよく耳にします。

ノベラクトケアでは、埼玉県内で重度訪問介護を利用されているご家族から、認定調査の前後を含めたご相談を受けることがあります。すでにサービスを利用中のご家族に対しては、日頃の介助内容の記録が、次回の更新調査の際に伝え忘れを防ぐ材料になるというお話をすることもあります。

まずは今日、直近1週間のうちで「これは毎回大変だった」と感じた場面を一つだけ、簡単にメモに残してみてください。それだけでも、次に調査員と話す機会が来たときの準備になります。

埼玉県内で重度訪問介護の利用を検討されている方、認定調査を控えて不安のある方は、こちらからお気軽にご相談ください。窓口や手続きの流れ全体についてははじめての障害福祉サービス|申請の流れを5ステップでわかりやすくも参考にしてください。

よくある質問

Q. 概況調査票は家族が自分で書くものですか?

いいえ、概況調査票は認定調査員が記入する書類です。ただし、記入内容のもとになる情報(外出頻度、就労状況、介護者の健康状態など)は、調査当日にご家族や本人が伝えた内容がベースになります。

Q. 特記事項に書いてもらえる内容に決まりはありますか?

認定調査項目に直接関係する内容だけでなく、「調査対象者に必要とされる支援の度合いに関することで確認できた事項」であれば、幅広く記載対象になります。ただし、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載することが調査員に求められているため、伝える側も要点を整理しておくと伝わりやすくなります。

Q. 特記事項の内容だけで区分が変わることはありますか?

一次判定はコンピュータによる機械的な判定で、二次判定では特記事項と医師意見書の一部項目を踏まえて市町村審査会が総合的に判断します。特記事項の内容が、一次判定からの補正材料の一つとして扱われる仕組みです。

Q. 認定調査で聞かれる80項目そのものについて知りたい場合は?

障害支援区分の認定調査で聞かれる80項目|家族が知っておきたい答え方の基準で、5分野・80項目の内訳と、評価の基準となる3つのルールについて解説しています。

Q. 認定調査は誰が行いますか?

市町村職員、または市町村から委託を受けた指定一般相談支援事業者の相談支援専門員等で、都道府県が行う障害支援区分認定調査員研修を修了した者(認定調査員)が実施します。