「重度訪問介護を使い始めたけれど、訪問看護も同時に受けられるの?」「訪問診療と訪問看護は何が違うの?どう使い分けるの?」——在宅で療養を続けるご家族や、利用調整に関わるケアマネ・相談支援員の方からよくいただく質問です。

先に、要点をまとめます。

  • 重度訪問介護・訪問看護・訪問診療は、名前が似ていても根拠となる制度も役割もまったく異なるサービスです。重度訪問介護は障害福祉サービスによる生活支援、訪問看護は医療保険または介護保険による療養上の世話、訪問診療は健康保険法にもとづく医師の診療行為です
  • 3つは要件を満たせば併用できます。「重度訪問介護を使うと訪問看護は使えなくなる」というのは誤解です
  • 訪問看護は年齢や状態によって医療保険・介護保険のどちらで利用するかが法令で決まっています。ALSや人工呼吸器使用などの状態は「別表第七」に該当し、医療保険が優先されます(出典: 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」別表第七)

この記事では、3つのサービスの違いと、それぞれが連携してご本人の在宅生活を支える仕組みを、できるだけかみくだいて解説します。

重度訪問介護・訪問看護・訪問診療はどう違う?

重度訪問介護は障害福祉サービスの生活支援、訪問看護は医療保険/介護保険の療養上の世話、訪問診療は健康保険法にもとづく医師の診療行為です。

重い障害や難病を抱えながらご自宅で暮らすには、おおまかに次の3つのサービスが組み合わさって機能しています。

  • 重度訪問介護、障害福祉サービス(障害者総合支援法)に基づく生活支援
  • 訪問看護、医療保険または介護保険に基づく療養上の世話・診療の補助
  • 訪問診療(在宅医療)、医師が定期的に自宅を訪問する医療行為

「介護のヘルパーさん」「看護師さん」「お医者さん」が、それぞれ違う制度のもとで、それぞれの役割でお宅に来てくださる、と整理するとイメージしやすいかもしれません。

「ご本人の在宅生活」を中心ハブとし、重度訪問介護(生活支援)・訪問看護(医療保険/介護保険)・訪問診療(医療行為)の3本の柱をそれぞれの根拠法・担い手・支援内容とともに並べたハブ&スポーク図。3サービスが併用できることを示す注記付き。
「ご本人の在宅生活」を中心ハブとし、重度訪問介護(生活支援)・訪問看護(医療保険/介護保険)・訪問診療(医療行為)の3本の柱をそれぞれの根拠法・担い手・支援内容とともに並べたハブ&スポーク図。3サービスが併用できることを示す注記付き。

重度訪問介護は何を担う?

食事・入浴・排泄などの身体介護、調理・洗濯などの家事援助、見守り、通院の付き添いなど、生活全般の支援を長時間連続して行います。

重度訪問介護は、障害支援区分4以上で重度の肢体不自由・重度の知的障害・精神障害により常時介護が必要な方を対象とした障害福祉サービスです(障害者総合支援法)。

主に行うのは次のような生活全般の支援です。

  • 食事・入浴・排泄など身体介護
  • 調理・洗濯・買い物などの家事援助
  • 体位変換、見守り、コミュニケーション支援
  • 通院や外出への付き添い
  • 喀痰吸引・経管栄養など、研修を修了したヘルパーが行える範囲の医療的ケア

ポイントは「長時間連続して、生活全体を見守る」ことが前提になっている点です。1回数十分の訪問で完結する介護保険の訪問介護や、障害福祉の居宅介護とは性格が違います。

詳しい対象要件や費用については 重度訪問介護とは?対象者・費用・申請方法をわかりやすく解説 もあわせてご覧ください。

訪問看護は何を担う?

看護師・保健師・理学療法士などが自宅を訪問し、バイタル測定・医療処置・機器管理・リハビリなど、医師の指示にもとづく療養上の世話と診療の補助を行います。

訪問看護は、看護師・保健師・理学療法士などが自宅に訪問して行う、療養上の世話と診療の補助です。主治医が交付する「訪問看護指示書」に基づき、医療の一部を在宅で提供します。

主な内容は次のとおりです。

  • バイタル測定・健康観察
  • 服薬管理、点滴、注射などの医療処置
  • 人工呼吸器・吸引器など医療機器の管理
  • 床ずれ(褥瘡)の処置
  • 経管栄養や留置カテーテルの管理
  • リハビリテーション
  • ご家族への介護指導・相談支援

重度訪問介護のヘルパーが行う「医療的ケア」は、研修制度で認められた範囲(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内の喀痰吸引、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)に限られます。それ以外の医療行為や、医師の指示が変わったときの調整は看護師の領域であり、ここが訪問看護の出番です。

訪問看護は医療保険と介護保険、どちらで使う?

40歳未満は医療保険、要介護・要支援認定がある方は原則介護保険、ただし「別表第七」に該当する難病等は介護保険対象でも医療保険が優先されます。

訪問看護は、対象者の年齢や状態によって医療保険・介護保険のどちらで利用するかが法令で決まっています。原則は次のとおりです。

  • 40歳未満の方 → 医療保険
  • 要介護・要支援認定を受けた方 → 介護保険が優先
  • 介護保険対象でも「厚生労働大臣が定める疾病等(特掲診療料の施設基準等別表第七)」に該当する方 → 医療保険が優先

別表第七には、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、多発性硬化症、パーキンソン病関連疾患(ヤール3度以上かつ生活機能障害度II度以上)、脊髄性筋萎縮症、人工呼吸器を使用している状態などが含まれます(厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」別表第七)。

40〜64歳でも、介護保険の特定疾病に該当しなければ医療保険での訪問看護となります。重度訪問介護を利用される方の多くは、医療保険で訪問看護を受けるケースが少なくありません。

訪問診療と往診はどう違う?

訪問診療は医師が計画的に定期訪問する診療、往診は症状急変時など必要時に医師が訪問する診療です。

「訪問診療」と「往診」は、同じ意味で使われがちですが、医療制度上は明確に区別されています(厚生労働省 在宅医療関連資料)。

  • 訪問診療、通院が困難な患者さんに対し、計画的に医師が定期訪問して診療する仕組み(例: 月2回の定期訪問)
  • 往診、患者さんやご家族の求めに応じて、急変時など必要時に医師が訪問する診療

在宅医療を担う医療機関のうち、24時間の連絡体制と緊急往診の体制を整え、訪問看護ステーションと連携できる医療機関は「在宅療養支援診療所(在支診)」「在宅療養支援病院(在支病)」として届け出ています。重い障害や難病の方が在宅で過ごす場合、これらの医療機関と契約しているケースが多くなります。

3つのサービスは同時に利用できる?

できます。重度訪問介護・訪問看護・訪問診療は財源も根拠法も別なので、要件を満たせば組み合わせて利用するのが本来の在宅医療の姿です。

ご相談で多いのが、「重度訪問介護を使い始めたら、訪問看護はもう使えないのでは?」という誤解です。

結論からお伝えすると、重度訪問介護・訪問看護・訪問診療は、要件を満たせば併用できます。

  • 重度訪問介護、障害者総合支援法(障害福祉)
  • 訪問看護、健康保険法または介護保険法(医療系)
  • 訪問診療、健康保険法(医療系)

それぞれ財源も根拠法も別なので、組み合わせて利用するのが本来の在宅医療の姿です。たとえば、人工呼吸器を使うALSの方が、

  • 平日の日中:重度訪問介護のヘルパーが見守り・身体介護・吸引
  • 週3回:訪問看護師が機器管理と健康観察
  • 月2回:在宅医が訪問診療で全身状態の評価と処方

といった組み合わせで生活されているケースは、決して珍しくありません。

連携の現場で起きやすい「すきま」はどこ?

サービス担当者会議での役割共有不足、医療的ケアの指示系統の未整理、急変時の連絡フロー未確定の3点が典型的な「すきま」です。

3つのサービスをうまく回すうえで、ご家族とケアマネ・相談支援員が知っておくとよい注意点をまとめます。

サービス担当者会議で共通認識をつくる

重度訪問介護を導入する際、相談支援専門員が「サービス等利用計画」を作成します。このとき、訪問看護ステーションや在宅医にも声をかけ、サービス担当者会議で全員の役割を確認しておくと、後の連携がスムーズです。

「ヘルパーさんはどこまでやってくれるのか」「具合が悪くなったときの連絡先はどこか」をご家族・支援者全員が共有することが大切です。

医療的ケアの指示系統を確認する

ヘルパーが喀痰吸引や経管栄養を行うには、主治医の指示書と訪問看護師との連携が法令で定められています(社会福祉士及び介護福祉士法 等)。指示書の有効期限や、看護師による定期的な手技確認のタイミングを、事業所間で共有しておく必要があります。

急変時の役割分担を決めておく

夜間に状態が変わったとき、最初に連絡するのは誰か。救急搬送するかどうかの判断は誰がするか。「急変時対応のフロー」をあらかじめ書面化しておくことを強くおすすめします。重度訪問介護の事業所、訪問看護ステーション、在宅医の3者で擦り合わせておくと、ご家族の不安も大きく減ります。

夜間ケアの考え方は 「夜の介護がしんどい」24時間見てもらえるサービスがあるって本当? でも詳しく解説しています。

ケアマネ・相談支援員が調整で気をつけることは?

40歳以上で介護保険対象でも別表第七該当なら訪問看護は医療保険優先、65歳になっても重度訪問介護は自動的に介護保険へ移行しません。

40歳以上の方で介護保険の対象になる場合でも、別表第七に該当する難病や人工呼吸器装着患者は、訪問看護は医療保険優先となります。介護保険のケアプランと、医療保険の訪問看護指示の両方を整合させる必要があるため、最初の調整が肝になります。

また、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護は、65歳になっても介護保険サービスに自動移行するわけではありません。本人の状態とこれまでの利用実績に応じて、市町村の判断で重度訪問介護を継続できる場合があります(障害者総合支援法第7条「介護保険優先原則」の例外運用)。詳しくはお住まいの市町村の障害福祉課にご確認ください。

埼玉県内で在宅医療の連携先を探すには?

市町村の障害福祉課・地域包括支援センター・県の難病相談支援センター・相談支援事業所のいずれかへの相談から始めるのが確実です。

埼玉県では、各保健所・市町村が在宅医療・介護連携推進事業として、地域の在宅医・訪問看護ステーション一覧を整備しています。具体的な事業所選びは、

  • 市町村の障害福祉課
  • 市町村の地域包括支援センター(高齢者の場合)
  • 県の難病相談支援センター(難病の場合)
  • 相談支援事業所

への相談から始めるのが確実です。エリア別の相談窓口は 埼玉で介護の相談をしたい|無料で頼れる窓口と相談先一覧 にまとめています。

川越市エリアの在宅支援 や さいたま市エリアの在宅支援 では、地域の医療機関と日常的に連絡を取り合いながらケアにあたっています。

「3つを同時に使うのは大変そう」と感じたら

複数の事業所が出入りすることに、最初は戸惑われるご家族も多くいらっしゃいます。「窓口が増えると、誰に何を言えばいいのかわからなくなる」というお気持ちは自然なものです。

そのために存在するのが相談支援専門員です。サービス全体のコーディネートを担い、ご家族の代わりに事業所間の連絡調整をしてくれます。まだ相談支援専門員がついていない場合は、市町村の障害福祉課で「セルフプランから相談支援に切り替えたい」と伝えれば、地域の事業所を紹介してもらえます。相談支援専門員の役割については相談支援専門員って何をしてくれる人?サービス等利用計画とセルフプランの違いでも詳しく解説しています。

ノベラクトケア(株式会社Noveract)は、埼玉県川越市に本社、さいたま市西区に事業所を構える重度訪問介護事業所です。24時間365日の支援体制で、全スタッフが医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)の研修を修了しています。地域の訪問看護ステーション・在宅医の先生方と日常的に連携しながらケアを行っています。

「訪問看護や在宅医も含めて、どう体制を組めばいいかわからない」というご相談も歓迎です。サービスの組み合わせ方から、まずお気軽にご相談ください。

お電話でのご相談:048-871-6572
Webからのお問い合わせ:無料相談・お問い合わせフォーム

ご本人とご家族にとって無理のない在宅生活の形を、地域の医療・福祉の力を集めて一緒に整えていきましょう。

よくある質問

重度訪問介護を利用しながら、訪問看護も同時に使えますか?

はい、使えます。重度訪問介護は障害福祉サービス、訪問看護は医療保険または介護保険にもとづくサービスで、財源も根拠法も別のため、要件を満たせば併用できます。「重度訪問介護を使うと訪問看護は使えなくなる」というのは誤解です。

訪問看護は医療保険と介護保険、どちらで利用することになりますか?

40歳未満の方は医療保険、要介護・要支援認定を受けた方は原則介護保険です。ただし介護保険対象の方でも、ALSや人工呼吸器使用など「別表第七」に該当する状態では医療保険が優先されます。詳しくは主治医または訪問看護ステーションにご確認ください。

訪問診療と往診はどう使い分けるのですか?

訪問診療は医師が計画的に定期訪問する診療(例: 月2回)、往診は症状の急変時などに求めに応じて医師が訪問する診療です。在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院として届け出ている医療機関は、24時間の連絡体制と緊急往診の体制を整えています。

65歳になったら、重度訪問介護から介護保険サービスに自動的に切り替わりますか?

いいえ、自動的には切り替わりません。障害者総合支援法に基づく重度訪問介護は、本人の状態とこれまでの利用実績に応じて、市町村の判断で継続できる場合があります。詳しくはお住まいの市町村の障害福祉課にご確認ください。

訪問看護・訪問診療の連携先はどこに相談すればいいですか?

市町村の障害福祉課、地域包括支援センター(高齢者の場合)、県の難病相談支援センター(難病の場合)、相談支援事業所のいずれかへの相談から始めるのが確実です。埼玉県内の相談窓口一覧は埼玉で介護の相談をしたい|無料で頼れる窓口と相談先一覧にまとめています。