「重度訪問介護を申請したけれど、思っていたより支給時間が短かった」
「同じような状態なのに、知り合いの市と支給される時間数が全然ちがう」
重度訪問介護を使い始めたご家族・ケアマネからよく寄せられるのが、この「支給時間(支給量)」をめぐる戸惑いです。サービスがあること自体は知っていても、その時間数がどういう仕組みで、誰が、何をもとに決めているのかは、意外と知られていません。
この記事では、重度訪問介護の支給時間がどう決まるのか、そして「足りない」と感じたときにご家族・ケアマネがどう動けばよいのかを、障害者総合支援法と厚生労働省の公式情報をもとに整理します。制度そのものの基本は重度訪問介護とは?対象者・費用・申請方法をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
支給時間(支給量)は市町村が決める
まず大前提として、重度訪問介護をはじめとする障害福祉サービスの支給量(1か月あたりに使える時間数など)を決めるのは、お住まいの市町村です(出典: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」第22条)。
国が全国一律の時間数を決めているわけではありません。だからこそ、住んでいる市町村によって支給時間に差が出ることがあります。この「市町村が決める」という点が、支給時間の仕組みを理解する出発点になります。
支給決定までの大きな流れは、申請 → 障害支援区分の認定 → 勘案事項の調査 → サービス等利用計画案の作成 → 支給決定(支給量の決定)、という順序で進みます。申請から利用開始までの具体的な5ステップははじめての障害福祉サービス|申請の流れを5ステップでわかりやすくで解説しています。
市町村は「勘案事項」を見て決めている
では、市町村は何を見て支給時間を決めているのでしょうか。法令では、支給の要否や支給量を決めるにあたって市町村が考慮すべき事項(勘案事項)が定められています(出典: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則」第12条)。
おもな勘案事項は次のようなものです。
- - 本人の心身の状況・障害支援区分 — どの程度の介護が必要な状態か
- - 介護を行う人の状況 — 家族など、ふだん介護をしている人がいるか、その人の健康状態や就労の状況はどうか
- - 本人のサービス利用に関する意向 — どんな暮らしをしたいか、どう支援を受けたいか
- - 介護給付等の受給状況 — 他の障害福祉サービスをどれだけ使っているか
- - 介護保険サービスの利用状況 — 介護保険の対象年齢の場合、そちらをどう使っているか
ここで大切なのは、支給時間は障害支援区分だけで機械的に決まるわけではない、ということです。「家族がどれだけ介護を担えるか」「本人がどんな暮らしを望むか」といった、その家庭ごとの事情が反映される仕組みになっています。
つまり、ご本人やご家族の状況がきちんと伝わっていなければ、必要な時間が支給時間に反映されにくくなります。サービス等利用計画を作る相談支援専門員に、現状と希望を具体的に伝えることがとても重要です。
ご自身のケースが対象になるかどうかが気になる方は、まず「うちの家族も使える?」重度訪問介護の対象をわかりやすくチェックで要件を確認しておくとよいでしょう。
「国庫負担基準」は個人の上限ではありません
支給時間を考えるうえで、誤解されやすいのが「国庫負担基準」という言葉です。
国庫負担基準とは、訪問系サービスについて、国が市町村に対して負担する費用の上限を、障害支援区分ごとに定めたものです。市町村間でのサービス提供のばらつきをなくし、限られた国費を公平に配分するための仕組みです(出典: 厚生労働省「訪問系サービスに係る国庫負担基準について」)。
ここで最も大切なポイントは、国庫負担基準は「市町村に対する国庫負担の上限」であって、「個々の利用者の支給量の上限」ではないということです。
厚生労働省の資料でも、国庫負担基準は個人のサービスの上限ではなく市町村に対する精算基準の上限であり、同じ市町村のなかでサービス利用の少ない方から多い方へ回すことができる柔軟な仕組みである、と説明されています(出典: 厚生労働省「国庫負担基準について」)。
さらに、重度障害者が多いなどの理由で国庫負担基準を超えてしまう市町村に対しては、地域生活支援事業や補助金による財政支援も行われています(出典: 厚生労働省「国庫負担基準について」)。
「国庫負担基準があるから、これ以上は時間を増やせない」と説明されたとしても、それは制度上の正確な説明とは限りません。国庫負担基準を理由に一律で個人の支給時間を頭打ちにすることは、本来の制度の趣旨とは異なるのです。長時間の連続したケアがなぜ重度訪問介護で可能なのかは、訪問介護の「時間が足りない」を解決!長時間ケアができる制度とはもご参照ください。
2026年(令和8年)の国庫負担基準の見直し
制度は毎年のように更新されます。直近では、令和8年(2026年)6月施行で、訪問系サービス(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援)の国庫負担基準が見直されます。これは介護職員等の処遇改善加算の見直しに連動したもので、障害支援区分ごとの国庫負担基準の単位数が引き上げられる方向の改正です(出典: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定」関連資料)。
これは市町村への国庫負担に関わる改正であり、ただちに個人の支給時間が増えることを保証するものではありません。ただし、市町村が支給決定をしやすくなる背景の一つにはなりえます。最新の運用は市町村によって異なるため、詳しくはお住まいの市町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。
「支給時間が足りない」と感じたときにできること
実際の暮らしのなかで「今の支給時間では家族が休めない」「夜間が手薄で不安」と感じることは、決して珍しくありません。そんなときにできることを整理します。
1. 相談支援専門員に状況の変化を伝える
支給量は一度決まったら変えられない、というものではありません。介護者の体調が悪化した、本人の状態が変わった、就労や通院の都合が変わった——こうした変化があれば、それを勘案事項として改めて伝えることで、支給量の見直し(変更申請)につながることがあります。まずは相談支援専門員・ケアマネに具体的に相談しましょう。
2. 「なぜこの時間数なのか」を市町村に確認する
支給決定の通知を受け取ったら、その時間数の根拠を市町村の窓口に確認してかまいません。前章でふれたとおり、国庫負担基準を理由にした一律の頭打ちは制度の趣旨と異なります。家庭の事情がきちんと反映されているかを、落ち着いて確認することが大切です。
3. 決定に納得できないときの審査請求
市町村の支給決定の内容に不服があるときは、都道府県知事に対して審査請求を行うことができます(出典: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」第97条)。これは法律で認められた正式な権利です。いきなり審査請求をする前に、まずは相談支援専門員や市町村窓口との話し合いを尽くすのが現実的ですが、「制度として不服を申し立てる道がある」ことは知っておいて損はありません。
どこに相談すればよいか迷うときは、埼玉で介護の相談をしたい|無料で頼れる窓口と相談先一覧に、埼玉県内の無料で頼れる相談先をまとめています。
まとめ:支給時間は「伝え方」で変わりうる
重度訪問介護の支給時間は、
- 市町村が決める
- 障害支援区分だけでなく、家庭ごとの勘案事項(介護者の状況・本人の意向など)をもとに決まる
- 国庫負担基準は個人の上限ではない
- 状況が変われば見直し(変更申請)ができ、不服があれば審査請求もできる
という仕組みになっています。
支給時間は「決められたものを受け入れるしかないもの」ではなく、ご本人・ご家族の状況をきちんと伝えることで変わりうるものです。一人で抱え込まず、相談支援専門員や市町村窓口、そして私たちのような事業所に、遠慮なくご相談ください。
ご相談・お問い合わせ
ノベラクトケアでは、重度訪問介護の支給時間や申請のことについて、無料でご相談を承っています。
- - 電話: 048-871-6572(平日9:00〜18:00)
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- - 対応エリア: 埼玉県川越市・さいたま市を中心に、ふじみ野市・富士見市・志木市・所沢市・朝霞市など埼玉県内に対応
「支給時間が足りているのか分からない」「これから申請したい」という段階でも構いません。お気軽にご連絡ください。
参考・出典
- - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(第22条・第97条)
- - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則」(第12条)
- - 厚生労働省「訪問系サービスに係る国庫負担基準について」
- - 厚生労働省「国庫負担基準について」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料)
- - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領」
※制度の対象範囲や運用、支給量の基準は、市町村によって異なり、随時更新されます。最新かつ詳細な内容は、必ずお住まいの市町村の障害福祉担当窓口・相談支援専門員にご確認ください。
