「この手当のこと、誰も教えてくれなかった」——在宅で重度の障害のあるご家族を支える方から、しばしば伺う言葉です。障害福祉の手当は申請主義で、自分から申請しないかぎり支給されません。知っているかどうかで、家計に年間30万円以上の差がつくことがあります。
先に、要点をまとめます。
- 著しく重度の障害があり日常生活に常時特別の介護が必要な在宅の20歳以上の方には、国の特別障害者手当として月額30,450円(令和8年4月から適用)が支給されます(出典: 厚生労働省「特別障害者手当について」)
- 障害者手帳を持っていなくても対象になる場合があります。判定は所定の診断書で行われ、申請窓口はお住まいの市区町村です
- 埼玉県内の市町村には在宅重度心身障害者手当(月額5,000円)という独自の手当もありますが、特別障害者手当とは併給できません
なお、この手当には「受給を始めたあと、知らずにいると支給が止まってしまう手続き」が1つあります。ちょうど今の時期(8月)に関わる話なので、記事の後半で説明します。
特別障害者手当とはどんな手当?
著しく重度の障害があり、常時特別の介護が必要な在宅の方に国が支給する月額30,450円の手当です。使いみちに制限はありません。
厚生労働省の案内によると、特別障害者手当は「精神又は身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者」に対し、重度の障害のため必要となる精神的・物質的な特別の負担の軽減の一助として支給される国の制度です(出典: 厚生労働省「特別障害者手当について」)。使いみちは自由で、おむつや衛生用品の購入費、吸引器の消耗品、夏場のエアコンの電気代など、在宅ケアで増えがちな支出にそのまま充てられます。
障害年金とはまったく別建ての制度である点も大切です。障害年金を受け取っていても、要件を満たせば特別障害者手当をあわせて受給できます。ただし、後述するとおり所得制限の判定では年金額が所得に算入されます。
重度訪問介護などのサービス利用料には月ごとの負担上限があり、世帯の状況によっては自己負担0円になる仕組みがあります。サービス側の費用は介護サービスの費用が不安な方へ|自己負担0円になるケースも解説で整理していますが、特別障害者手当は「支出を抑える」のではなく「現金が入ってくる」制度です。ご家庭の家計を考えるときは、この両方をセットで確認してみてください。医療費の窓口負担そのものを軽くする制度としては、重度心身障害者医療費助成(マル福)とは?埼玉県の対象・自己負担・申請をやさしく解説もあわせてご覧ください。所得制限の基準がこの手当と同じ考え方なので、窓口確認の手間が減ります。
誰が対象になる?障害者手帳がなくても申請できる?
20歳以上・在宅で、日常生活に常時特別の介護が必要なほど障害が重い方が対象です。手帳がなくても、診断書で基準を満たせば受給できます。
対象かどうかは手帳の等級だけで自動的に決まるのではなく、所定の診断書に基づいて審査されます。目安として、さいたま市は「身体障害者手帳1・2級及び療育手帳マルA程度の障害が重複している方」または「1つの障害であっても同程度の状態にある方」を挙げ、手帳を所持していなくても対象になる場合があると案内しています(出典: さいたま市「特別障害者手当」)。
具体的には、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィーが進行して終日ベッド上で過ごしている方、頸髄損傷で四肢に重い麻痺がある方、人工呼吸器や経管栄養を使いながら在宅で暮らしている方などは、該当する可能性が十分にあります。当てはまるかどうか迷うときの目安は、「食事・排せつ・入浴・移動のほぼすべてに介助が必要で、常に見守りが欠かせない状態か」です。ご家族がこの状態に近いなら、まず窓口で相談してみる価値があります。
いくらもらえる?いつ振り込まれる?
月額30,450円(令和8年4月から適用)が、毎年2月・5月・8月・11月の年4回、それぞれ前月分までまとめて振り込まれます。
年額に換算すると約36万5,000円です。手当額は物価の変動に応じて毎年度見直され、令和8年度は前年度から860円引き上げられました(出典: 奈良市「令和8年度 特別障害者手当等の支給額について」)。
支給の起点も重要です。認定されると申請した月の翌月分から支給対象になります。過去にさかのぼって受け取ることはできないため、申請が1か月遅れると、その1か月分はそのまま受け取れなくなります。「対象かもしれない」と思った時点で早めに動くことが、そのまま金額の差になります。
なお、特別障害者手当の対象は20歳以上です。20歳未満の重度の障害のあるお子さんには、同じ国の制度として障害児福祉手当(月額16,560円・令和8年度)が用意されています。20歳の誕生日を境に、障害児福祉手当から特別障害者手当へ申請し直す形になる点も覚えておいてください。
所得制限はある?障害年金をもらっていても対象になる?
所得制限はありますが、障害年金の受給自体は妨げになりません。ただし年金額も「所得」に含めて判定されます。
本人の前年の所得が一定額(扶養親族等がいない場合で375万8,000円・令和8年8月以降適用)を超えるとき、または配偶者や同居する扶養義務者(父母など)の所得が基準額以上のときは支給されません(出典: 厚生労働省「特別障害者手当について」)。
ここで注意したいのが、所得の数え方です。東京都心身障害者福祉センターの案内では「障害者本人が障害年金、遺族年金等の公的年金を受給している場合、当該給付費は所得に算入されます」とされています。税金のかからない障害年金も、この手当の判定では所得として数えられる——他の制度とは少し違うルールです。とはいえ、障害基礎年金を受給しながら特別障害者手当もあわせて受け取っているご家庭は少なくありません。「年金があるからうちは無理だろう」と自己判断で申請をやめてしまうのが、いちばんもったいないパターンです。窓口で試算してもらってから判断してください。
申請はどこで、どんな流れでする?
お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に、所定の診断書を添えて申請します。
おおまかな流れは次の5ステップです。
- 市区町村の障害福祉窓口に相談する。ご家族の状態を伝え、対象になりそうか、必要書類は何かを確認します
- 所定の診断書様式を受け取る。特別障害者手当には専用の診断書様式があり、障害の種類によって書式が分かれています
- 主治医に診断書の作成を依頼する。日常の介助の様子(食事・排せつ・移動・見守りの頻度など)を具体的に伝えると、実態が診断書に反映されやすくなります
- 申請書類一式を窓口に提出する。振込先口座の分かるものや、所得確認のための書類もあわせて必要になる場合があります
- 審査・認定後、申請月の翌月分から支給開始。結果は文書で通知されます
障害福祉サービス全体の申請の流れははじめての障害福祉サービス|申請の流れを5ステップでわかりやすくで解説しています。重度訪問介護の支給申請と手当の申請は、どちらも市区町村の同じ障害福祉窓口が入り口です。これから在宅ケアの体制を整える段階なら、あわせて相談すると手続きが一度で済みます。
埼玉県の「在宅重度心身障害者手当」とは何が違う?
埼玉県内の市町村が実施している月額5,000円の手当です。ただし、特別障害者手当を受給している方は対象外とされています。
埼玉県内の多くの市町村には、在宅の重度心身障害者(児)向けの独自手当として「在宅重度心身障害者手当」があります。朝霞市の例では、対象は身体障害者手帳1・2級、療育手帳○A・A・B、精神障害者保健福祉手帳1・2級のいずれかを持つ65歳未満の方(64歳までに認定された方は65歳以降も継続可)で、月額5,000円が9月と3月の年2回に分けて支給されます(出典: 朝霞市「在宅重度心身障害者手当」)。
ここで大切なのが、2つの手当の関係です。朝霞市の案内では、特別障害者手当・障害児福祉手当などを受給している方は在宅重度心身障害者手当の対象外とされています。つまり両方を受け取ることはできず、特別障害者手当の対象になる方は、金額の大きい特別障害者手当を優先して検討するのが基本の順番になります。逆に、特別障害者手当の基準には届かないものの手帳の要件を満たす方にとっては、在宅重度心身障害者手当が受け皿になります。
なお、本人に住民税が課税されている場合は支給停止になるなど、細かな条件は市町村ごとに少しずつ異なります。お住まいの市町村での扱いに迷ったら、埼玉で介護の相談をしたい|無料で頼れる窓口と相談先一覧で紹介している窓口で確認できます。
手当が止まる・対象外になるのはどんなとき?
施設への入所、3か月を超える入院、所得の超過、そして毎年8月ごろの現況届の出し忘れが代表的です。
特別障害者手当は「在宅」の方のための手当なので、次のような場合は支給されません。
- 障害者支援施設などに入所したとき。さいたま市の案内では、有料老人ホームやグループホーム等の一部施設は例外とされています(出典: さいたま市「特別障害者手当」)
- 病院・診療所に継続して3か月を超えて入院したとき。長期入院になった場合は対象から外れます。入院中のご家族への付き添いについては入院しても、いつものヘルパーにそばにいてほしい|入院中の重度訪問介護ガイドで解説しています
- 前年の所得が基準額を超えたとき。働き方や世帯の状況が変わった年は注意が必要です
そして冒頭でお伝えした「知らずにいると支給が止まってしまう手続き」が、現況届です。受給者には毎年8月ごろに市区町村から現況届の案内が届き、期間内に提出しないと手当が差し止めになる場合があります(出典: 越谷市「特別障害者手当・障害児福祉手当・経過的措置による福祉手当」)。ちょうどこの記事を公開している8月は、現況届の時期にあたります。すでに受給中の方は、案内が届いていないか、提出を済ませたかを一度確認してみてください。
まとめ|手当は「在宅で暮らし続ける力」になります
この記事で持ち帰っていただきたいのは、次の3点です。
- ご家族が特別障害者手当の対象になりそうかを判断する目安(20歳以上・在宅・常時特別の介護が必要な状態。手帳がなくても診断書で判定)
- 障害年金と両方受け取れること。ただし判定上は年金額も所得に数えられるため、あきらめる前に窓口で試算してもらう価値があること
- 埼玉県の在宅重度心身障害者手当とは併給できないため、対象になるなら月額の大きい特別障害者手当から検討する、という順番
在宅での介護は、体力だけでなく家計との長い付き合いでもあります。月額30,450円という金額は、それだけで生活が変わるものではないかもしれません。それでも、おむつ代や光熱費のように「介護があるから増えている支出」を手当でまかなえると、暮らしの選択肢は少し広がります。
まずは今日、ご家族の障害者手帳の等級と、直近1年の入院の有無・期間を1枚のメモに書き出してみてください。窓口に電話をかけるとき、この2つが手元にあるだけで、対象になりそうかの話がぐっと具体的に進みます。
ノベラクトケア(株式会社Noveract)は、埼玉県川越市を拠点に、さいたま市西区にも事業所を構え、24時間365日体制で重度訪問介護を提供しています。全スタッフが医療的ケア(たんの吸引・経管栄養)の資格を保有し、川越市・さいたま市をはじめ埼玉県全域のご自宅へ伺っています。
手当の申請窓口と重度訪問介護の申請窓口は、同じ市区町村の障害福祉窓口です。「手当も、ヘルパーの利用も、何から手を付ければいいのか分からない」という段階のご相談も歓迎です。お電話(048-871-6572)またはお問い合わせフォームから、お気軽に無料相談をお寄せください。
よくある質問
特別障害者手当は障害年金と一緒に受け取れますか?
受け取れます。特別障害者手当は障害年金とは別建ての国の手当で、要件を満たせば両方を受給できます。ただし所得制限の判定では、障害年金など非課税の公的年金も所得に算入される点に注意してください。
障害者手帳を持っていなくても申請できますか?
申請できます。対象かどうかは所定の診断書に基づいて判定され、さいたま市も手帳を所持していなくても対象になる場合があると案内しています。まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口に相談してください。
いつの分から支給されますか?さかのぼって受け取れますか?
認定されると、申請した月の翌月分から支給対象になります。過去の分をさかのぼって受け取ることはできません。支給は毎年2月・5月・8月・11月の年4回で、それぞれ前月分までがまとめて振り込まれます。
埼玉県の在宅重度心身障害者手当と両方もらえますか?
両方は受け取れません。朝霞市など県内市町村の案内では、特別障害者手当や障害児福祉手当の受給者は在宅重度心身障害者手当の対象外とされています。特別障害者手当の対象になる方は、月額の大きい特別障害者手当を優先して検討してください。
入院や施設入所をしたら手当はどうなりますか?
病院・診療所に継続して3か月を超えて入院した場合や、障害者支援施設などに入所した場合は支給されません(有料老人ホーム等の一部施設には例外があります)。該当しそうな場合は、お住まいの市区町村の窓口に早めに確認してください。
