「重度訪問介護を使えることになったけれど、どの事業所にお願いすればいいの?」
「今の事業所だけだとヘルパーが足りない。事業所は増やしたり変えたりできるの?」
支給決定(受給者証)が出たあと、多くのご家族がここで立ち止まります。サービスを使えること自体は決まっても、実際に来てくれる事業所を「選んで契約する」のはご本人・ご家族の役割だからです。
この記事では、重度訪問介護の事業所をどう選び、どう契約し、必要なら複数の事業所を組み合わせたり変更したりするにはどうすればよいかを、障害者総合支援法と公式情報をもとにやさしく整理します。制度そのものの基本を先に知りたい方は重度訪問介護とは?対象者・費用・申請方法をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
受給者証が出ても「自動でヘルパーは来ない」
まず押さえておきたいのは、受給者証(支給決定)が交付されても、それだけでヘルパーが来てくれるわけではない、ということです。
独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)の解説でも、重度訪問介護は支給決定を受けたあと、事業者との契約によってサービスを利用する仕組みとされています(出典: WAM NET「重度訪問介護」)。つまり、
- 市町村が支給決定をして受給者証を交付する
- ご本人・ご家族が、サービスを提供してくれる事業所を選ぶ
- その事業所と利用契約を結ぶ
- 契約内容を市町村に報告する(契約内容報告書)
という順序で、ようやく実際の支援が始まります。申請から支給決定までの流れがまだ不安な方ははじめての障害福祉サービス|申請の流れを5ステップでわかりやすくで先に確認しておくと、この「事業所選び」の位置づけが分かりやすくなります。
「サービスが決まったのに、誰も来ない」という空白期間で不安になるご家族は少なくありません。受給者証が出たら、できるだけ早く事業所探しに動き出すことが大切です。
重度訪問介護の事業所を選ぶときの見極めポイント
では、たくさんある事業所のなかから、どう選べばよいのでしょうか。重度訪問介護はとくに「長時間・継続的なケア」が前提になるため、一般的な訪問介護とは違う視点が必要です。
1. 必要な時間帯・長さに対応できるか
重度訪問介護の特徴は、長時間の連続したケアにあります。夜間・早朝・休日も含めて、ご本人に必要な時間帯をカバーできる体制があるかどうかは、最初に確認したいポイントです。とくに夜間や深夜帯にどこまで対応してもらえるかは、契約前に具体的に確かめておきましょう。
2. 医療的ケアに対応できるか
人工呼吸器・喀痰吸引・経管栄養などの医療的ケアが必要な場合、その対応ができるヘルパーが在籍しているかは必須の確認事項です。喀痰吸引等を行うには、ヘルパー側に所定の研修修了などの要件があります。「医療的ケアが必要」と伝えたときの事業所の反応を、遠慮なく確かめましょう。
3. 重度訪問介護そのものの実績があるか
訪問介護の事業所がすべて重度訪問介護を手がけているわけではありません。短時間の身体介護が中心の事業所もあれば、長時間ケアや難病の方の支援に慣れた事業所もあります。ALS・筋ジストロフィー・脊髄損傷など、ご本人の状態に近い支援の経験があるかを聞いてみるとよいでしょう。
4. 相性・コミュニケーション
長時間、生活の場にヘルパーが入るのが重度訪問介護です。だからこそ「人と人の相性」も大切な要素です。契約前の面談や見学で、説明が丁寧か、こちらの希望を聞いてくれるか、といった点も見ておきましょう。
契約の前に必ず受ける「重要事項説明」
事業所が決まったら契約に進みますが、その前に必ず行われるのが「重要事項説明」です。
障害福祉サービス事業者は、障害者総合支援法に基づく人員・設備・運営に関する基準(運営基準)により、サービスの内容や利用にあたっての注意点を記した重要事項説明書をもとに説明し、利用者の同意を得ることが定められています(出典: 厚生労働省「障害福祉サービス等の運営基準」)。
重要事項説明書には、たとえば次のような内容が書かれています。
- - 事業所の概要・サービス提供時間
- - 提供するサービスの内容と利用料・自己負担の考え方
- - 緊急時・事故発生時の対応
- - 苦情を相談できる窓口や苦情解決の体制
とくに見落とされがちなのが、最後の「苦情相談の窓口」です。万が一、サービスに困ったことが起きたとき、どこに相談できるのかが書かれています。契約は、内容に納得してから結ぶもの。分からない点はその場で質問し、急かされて署名する必要はありません。利用料・自己負担の考え方についても、この場でしっかり確認しておきましょう。
事業所は「1つに絞らなくていい」——複数利用と変更
「一度契約したら、その事業所だけに頼り続けないといけない」と思い込んでいる方がいますが、そうではありません。
複数の事業所を組み合わせて使える
支給決定された時間数の範囲内であれば、複数の事業所を組み合わせて利用することもできます。たとえば、ある事業所だけでは必要な時間をすべてカバーできない場合に、別の事業所と分担する、といった使い方です。
複数事業所での利用が可能かどうか、時間数をどう配分するかは、市町村やサービス等利用計画を作る相談支援専門員との調整によって、個別のケースに応じて決まります(出典: 神戸市「障害福祉サービス支給に関するガイドライン(訪問系サービス)」)。慢性的なヘルパー不足のなかで時間を確保するうえでも、現実的な選択肢になります。
事業所の変更もできる
「今の事業所と合わない」「もっと体制の整った事業所にお願いしたい」と感じたときは、事業所を変更することもできます。その際は、市町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員に相談し、新しい事業所と契約を結び直す形になります。
支給時間そのものが足りないと感じている場合は、事業所を増やす前に、まず支給量の見直しを検討したほうがよいこともあります。重度訪問介護の「支給時間」はどう決まる?足りないと感じたときの考え方で、見直し(変更申請)の考え方を整理していますので、あわせてご覧ください。
困ったときの相談先と、最初の一歩
事業所選びで迷ったとき、一人で抱え込む必要はありません。
サービス等利用計画を作る相談支援専門員へ
重度訪問介護を利用するときは、相談支援専門員がご自宅を訪問して心身の状況や環境、希望をていねいに聞き取り、サービス等利用計画を作成することになっています(出典: 厚生労働省「指定計画相談支援の運営基準」)。どの事業所が合いそうか、複数利用は可能か、といった相談も、この相談支援専門員が窓口になります。
市町村の障害福祉担当窓口へ
事業所の情報や、その地域で重度訪問介護を提供している事業所の一覧については、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口でも教えてもらえます。
埼玉県内で相談したいとき
埼玉県内で「どこに相談すればいいか分からない」という方は、埼玉で介護の相談をしたい|無料で頼れる窓口と相談先一覧に、無料で頼れる窓口をまとめています。そもそも重度訪問介護の対象になるか不安な段階なら、「うちの家族も使える?」重度訪問介護の対象をわかりやすくチェックで要件から確認しておくと安心です。
まとめ:事業所選びは「比べて、納得して、組み合わせる」
重度訪問介護の事業所選びについて、要点を整理します。
- 受給者証が出ても自動では始まらない。事業所を選んで契約することで支援がスタートする
- 選ぶときは、必要な時間帯・医療的ケア・実績・相性を確認する
- 契約前の重要事項説明で、苦情相談の窓口まで含めて納得してから契約する
- 事業所は1つに絞らなくてよい。複数利用も変更もできる(市町村・相談支援専門員と調整)
- 迷ったら、相談支援専門員や市町村窓口に相談する
ヘルパー不足が課題となるなかで、「とりあえず最初に見つかった事業所に」と決めてしまいがちですが、長くお付き合いする相手だからこそ、比べて、納得して選ぶことが、結果としてご本人とご家族の安心につながります。
ご相談・お問い合わせ
ノベラクトケアでは、重度訪問介護の事業所選びや、複数利用・乗り換えのご相談を無料で承っています。
- - 電話: 048-871-6572(平日9:00〜18:00)
- - お問い合わせフォーム: /contact
- - 対応エリア: 川越市・さいたま市をはじめ埼玉県全域に対応
「いくつか事業所を比べたい」「今の体制で足りるか相談したい」という段階でも構いません。お気軽にご連絡ください。
こんな場合はどうなる?よくある質問
Q. 受給者証が届けば、すぐにヘルパーは来てくれますか?
いいえ。受給者証(支給決定)が出ても、それだけでサービスは始まりません。重度訪問介護は、支給決定を受けたあと、サービスを提供する事業者と利用契約を結ぶことで利用できるようになります(出典: WAM NET「重度訪問介護」)。受給者証が届いたら、できるだけ早く事業所を探し、契約に進むことが大切です。
Q. 重度訪問介護の事業所はどう選べばいいですか?
ご本人に必要な時間帯(夜間・休日を含む)に対応できるか、人工呼吸器・喀痰吸引などの医療的ケアに対応できるか、重度訪問介護や難病の方の支援実績があるか、そして説明が丁寧で相性が合うか、といった点を確認するとよいでしょう。長時間・継続的に生活の場へ入るサービスだからこそ、複数の事業所を比べて納得して選ぶことをおすすめします。
Q. 契約の前にどんな説明を受けられますか?
障害福祉サービス事業者は、運営基準により、サービスの内容・利用料・緊急時の対応・苦情相談の窓口などを記した重要事項説明書をもとに説明し、利用者の同意を得ることが定められています(出典: 厚生労働省「障害福祉サービス等の運営基準」)。内容に納得できない点があれば、その場で質問してかまいません。急かされて署名する必要はありません。
Q. 1つの事業所だけで時間が足りないときはどうすればいいですか?
支給決定された時間数の範囲内であれば、複数の事業所を組み合わせて利用することもできます。複数事業所の利用が可能かどうか、時間数をどう配分するかは、市町村やサービス等利用計画を作る相談支援専門員との個別の調整で決まります。まずは相談支援専門員に相談してみてください。
Q. 今の事業所を変えたいときはどうすればいいですか?
事業所の変更はできます。市町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員に相談し、新しい事業所と契約を結び直す形になります。なお、事業所を変える前に「そもそも支給時間そのものが足りていないのではないか」という見直しが必要なケースもありますので、あわせて相談支援専門員にご相談ください。
Q. どこに相談すればいいか分かりません。
サービス等利用計画を作る相談支援専門員が、事業所選びや複数利用・変更の相談窓口になります。あわせて、市町村の障害福祉担当窓口でも、その地域で重度訪問介護を提供している事業所の情報を教えてもらえます。埼玉県内であれば無料で頼れる相談窓口もありますので、一人で抱え込まずにご相談ください。
参考・出典
- - 独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)「重度訪問介護」
- - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
- - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領」
- - 神戸市「障害福祉サービス支給に関するガイドライン(訪問系サービス)」
※事業所の選択・複数利用・変更や苦情解決の運用は、市町村によって異なり、随時更新されます。最新かつ詳細な内容は、必ずお住まいの市町村の障害福祉担当窓口・相談支援専門員にご確認ください。
