「筋ジストロフィーと診断されたけれど、これから自宅で暮らし続けられるのだろうか」
「だんだん体が動かなくなっていく家族を、家族だけで支えきれるのか不安」
筋ジストロフィーは、ゆっくりと、しかし確実に進行していく病気です。診断を受けてからの時間の長さゆえに、ご家族は「今は何とかなっているけれど、この先どうなるのか」という、出口の見えない不安を抱えやすい病気でもあります。
ですが、筋ジストロフィーのある方が自宅で暮らし続けるための制度は、医療と障害福祉の両面から、想像以上に整っています。鍵になるのは、指定難病としての医療費助成と、重度訪問介護をはじめとした障害福祉サービス、そして医療保険の訪問看護を、進行の段階に合わせて組み合わせていくことです。
この記事では、筋ジストロフィーのある方を在宅で支えるご家族・ケアマネ・相談支援専門員向けに、使える制度と在宅介護のはじめ方を整理します。出典は難病情報センター・厚生労働省・埼玉県の公式情報です。なお、似た経過をたどる病気として[ALSと診断されたら|家族が最初にやるべきこと・使える支援制度](/columns/als-family-guide)もあわせてご覧いただくと、在宅療養の全体像がつかみやすくなります。
筋ジストロフィーは「指定難病」です
筋ジストロフィーは、平成27年(2015年)7月1日から、難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)にもとづく指定難病113に位置づけられています(出典: 難病情報センター「筋ジストロフィー(指定難病113)」)。
「筋ジストロフィー」とひとことで言っても、デュシェンヌ型・ベッカー型・肢帯型・顔面肩甲上腕型・筋強直性(筋緊張性)ジストロフィーなど、いくつもの病型があります。発症する年齢も、進行の速さも、現れる症状も病型によって異なります。だからこそ、「同じ病名だから同じ経過をたどる」とは限らず、その方の状態に合わせた支援設計が必要になります。
指定難病であることの最大のメリットは、医療費助成の対象になりうるという点です。指定難病の医療費助成は、(1) 診断基準を満たして指定難病と診断され、(2) 「重症度分類等」に照らして病状が一定程度以上であるか、軽症でも医療費が高額な場合の特例に該当する、という条件で受けられます(出典: 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」)。
筋ジストロフィーの重症度分類では、生活能力(modified Rankin Scale)・食事/栄養・呼吸・循環の4項目が評価され、このうちいずれかが基準を満たせば申請の対象になります(出典: 難病情報センター「筋ジストロフィー(指定難病113)」)。進行に伴って歩行や嚥下、呼吸に影響が出てきた段階では、対象になる可能性が高まります。
在宅介護を支える3つの柱
筋ジストロフィーのある方の在宅生活は、大きく3つの制度の柱で支えられます。
1. 重度訪問介護(障害福祉サービス)
重度訪問介護は、重い障害のある方が自宅で暮らし続けるための、長時間の見守りと身体介護を組み合わせたサービスです。
対象になるのは、障害支援区分が区分4以上で、二肢以上に麻痺等があり、認定調査項目の「歩行」「移乗」「排尿」「排便」がいずれも「支援が不要」以外と認定されている方などです(出典: 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」)。筋ジストロフィーの進行によって四肢の力が落ち、日常生活の多くに介助が必要になった段階で、この要件に該当してくるケースが多くあります。
重度訪問介護そのものの仕組みは、[重度訪問介護とは?対象者・費用・申請方法をわかりやすく解説](/columns/what-is-severe-home-care)で詳しく整理しています。あわせて読んでいただくと、申請から利用開始までの流れがつかめます。
2. 訪問看護(医療保険)
筋ジストロフィー、正確には「進行性筋ジストロフィー症」は、訪問看護の別表第7「厚生労働大臣が定める疾病等」に含まれています。
この別表第7に該当する病気の方は、介護認定の有無や年齢にかかわらず、医療保険での訪問看護が適用され、週4日以上・1日複数回・2か所以上の訪問看護ステーションから訪問を受けることが可能になります(出典: 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」別表第7)。
たんの吸引・経管栄養・人工呼吸器の管理といった医療的ケアが必要になっても、訪問看護が手厚く入れる仕組みがあるということです。重度訪問介護(生活の支援)と訪問看護(医療の支援)の役割分担は、[重度訪問介護と訪問看護・訪問診療はどう違う?在宅医療との連携ガイド](/columns/home-medical-coordination)でくわしく解説しています。
3. 指定難病の医療費助成
前章でふれたとおり、筋ジストロフィーは指定難病として医療費助成の対象になりえます。埼玉県では、申請の窓口はお住まいの地域を管轄する保健所で、受給者証の発行までには申請からおおむね3〜4か月程度かかります(出典: 埼玉県「指定難病医療給付制度について」「指定難病医療給付制度申請の手続き(新規申請)」)。
時間がかかるため、医師から指定難病に該当すると説明を受けたら、早めに保健所に相談しておくことをおすすめします。お金まわりの全体像は[重度訪問介護の費用は?自己負担をやさしく解説](/columns/severe-care-cost-easy)もご参照ください。
進行に呼吸の問題が加わってきたら
筋ジストロフィーの多くの病型では、進行に伴って呼吸を担う筋肉の力も落ちていきます。やがて、非侵襲的な人工呼吸(マスク型のNPPV)や、気管切開を伴う人工呼吸器が必要になる方もいます。
「人工呼吸器が必要になったら、もう施設に入るしかないのでは」と感じるご家族は少なくありません。けれど、人工呼吸器を使いながら自宅で暮らしている方は、現実に大勢いらっしゃいます。在宅で人工呼吸器とともに暮らす仕組みは、[人工呼吸器をつけても自宅で暮らせる?在宅生活を支える仕組み](/columns/ventilator-home-life)で具体的にまとめています。
埼玉県では、在宅で人工呼吸器を使う難病・特定疾患の方に向けて、診療報酬で定められた回数を超える訪問看護の超過分を公費で負担する在宅人工呼吸器使用患者支援事業などが用意されています(出典: 埼玉県「在宅人工呼吸器使用患者支援事業について」)。停電・災害への備えについては[災害・停電が起きたら、うちの家族はどうなる?|重度訪問介護を使う在宅家族の災害備えガイド](/columns/disaster-preparedness-severe-care)も参考にしてください。人工呼吸器を使う方にとって、電源の確保は命に直結するテーマです。
家族が抱え込まないために
筋ジストロフィーは進行性の病気です。ご家族は「いつまで自分たちで支えられるのか」というプレッシャーを、何年にもわたって抱え続けることになります。
だからこそ、家族だけで背負わない仕組みを早めに作っておくことが大切です。
- - 相談支援専門員につながる — 障害福祉サービスを使うには、サービス等利用計画を作る相談支援専門員の存在が欠かせません。どこに相談すればよいか迷うときは[埼玉で介護の相談をしたい|無料で頼れる窓口と相談先一覧](/columns/saitama-consultation-guide)をご覧ください。
- - 患者・家族の会とつながる — 一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)は、患者・家族の電話相談や情報提供を行っています。同じ病気と向き合う人とつながることは、制度の情報源としても、気持ちの支えとしても力になります。
- - 介護負担そのものに向き合う — 在宅介護が長期化するなかで、ご家族自身が疲れ果ててしまうことは珍しくありません。[在宅介護がつらい…家族の負担を減らす方法と頼れるサービスまとめ](/columns/family-caregiver-burden)で、負担を軽くする考え方を整理しています。
まとめ:制度は「進行に合わせて組み替えていく」もの
筋ジストロフィーのある方の在宅生活は、一度仕組みを作って終わり、ではありません。歩行が難しくなった、嚥下が落ちてきた、呼吸の支援が必要になった——その段階ごとに、重度訪問介護・訪問看護・医療費助成の組み合わせを少しずつ組み替えていく、長いお付き合いになります。
まずは、
- 主治医に「指定難病の医療費助成の対象になるか」を確認する
- 相談支援専門員・ケアマネに、今後の進行を見据えた支援設計を相談する
- 保健所・市町村の障害福祉窓口に、申請の段取りを聞いておく
この3つから始めてみてください。一度に完璧な計画を立てる必要はありません。
ご相談・お問い合わせ
ノベラクトケアでは、筋ジストロフィーをはじめとした難病・重度障害のある方の重度訪問介護について、無料でご相談を承っています。
- - 電話: 048-871-6572(平日9:00〜18:00)
- - お問い合わせフォーム: [/contact](/contact)
- - 対応エリア: 埼玉県川越市・さいたま市を中心に、ふじみ野市・富士見市・志木市・所沢市・朝霞市など埼玉県内に対応
「まだサービスを使うか決めていないが、これからのことを相談したい」という段階でも構いません。お気軽にご連絡ください。
参考・出典
- - 難病情報センター「筋ジストロフィー(指定難病113)」
- - 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」
- - 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
- - 埼玉県「指定難病医療給付制度について」
- - 埼玉県「指定難病医療給付制度申請の手続き(新規申請)」
- - 埼玉県「在宅人工呼吸器使用患者支援事業について」
- - 一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)
※制度の対象範囲や運用は、病型・病状や市町村によって異なり、随時更新されます。最新かつ詳細な内容は、必ず主治医・お住まいの保健所・市町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。
