筋ジストロフィーが進んだ、頸髄を損傷して退院の話が出た、夜のたんの吸引で家族が眠れない。そんなとき、病院の相談員や親族から「施設も考えてみては」と言われることがあります。ところが調べ始めると、老人ホームの情報ばかりが出てきて、重い身体障害のある人が実際にどこへ入れるのかが見えてきません。

先に、要点をまとめます。

  • 人工呼吸器や筋ジストロフィーなど、医療的ケアと常時の介護の両方が必要な方の主な選択肢は、病院で暮らしながら介護を受ける「療養介護」です。障害支援区分6または5以上などの条件があります
  • 医療的ケアが中心ではなく、常時の介護が必要な方は障害者支援施設(施設入所支援)が選択肢です。生活介護を使っていて区分4以上(50歳以上は区分3以上)が目安です。少人数で暮らすグループホームもあります
  • 介護保険の施設(特別養護老人ホームなど)は、65歳以上の方か、40〜64歳で特定疾病がある方が対象です。筋ジストロフィーや交通事故による脊髄損傷は特定疾病に入っていません。施設と比べる対象として、重度訪問介護を使って自宅で暮らし続ける方法も残っています

制度の内容は、厚生労働省・埼玉県などの公式資料で2026年10月13日に確認したものです。どのサービスを使えるかは、お住まいの市区町村が障害支援区分や本人の状況をもとに決めます。

重い身体障害のある方の住まいの選択肢を5枚のカードで比べた図。療養介護は病院で医療的ケアと介護を受け、区分6で人工呼吸器を使う方や区分5以上で筋ジストロフィーの方などが対象。障害者支援施設は生活介護を使い区分4以上(50歳以上は区分3以上)。グループホームは少人数の住まいで、身体障害の方は原則65歳未満から利用。介護保険施設は65歳以上か40〜64歳で特定疾病がある方で、特養は原則要介護3以上。40〜64歳の筋ジストロフィーの方は対象外。自宅で重度訪問介護を使う場合は区分4以上で、市区町村が決めた時間数の範囲で長時間の介護を受ける。
重い身体障害のある方の住まいの選択肢を5枚のカードで比べた図。療養介護は病院で医療的ケアと介護を受け、区分6で人工呼吸器を使う方や区分5以上で筋ジストロフィーの方などが対象。障害者支援施設は生活介護を使い区分4以上(50歳以上は区分3以上)。グループホームは少人数の住まいで、身体障害の方は原則65歳未満から利用。介護保険施設は65歳以上か40〜64歳で特定疾病がある方で、特養は原則要介護3以上。40〜64歳の筋ジストロフィーの方は対象外。自宅で重度訪問介護を使う場合は区分4以上で、市区町村が決めた時間数の範囲で長時間の介護を受ける。

重い身体障害のある人が暮らせる施設には、どんな種類がある?

障害福祉の制度では、病院で暮らす「療養介護」、入所施設の「障害者支援施設」、少人数の「グループホーム」の3つが中心です。年齢や病気によっては介護保険の施設も対象になります。

老人ホームの情報が多く出てくるのは、検索結果の多くが介護保険の施設を扱っているためです。65歳未満で、介護保険の特定疾病にあたらない障害の方は、介護保険の施設には原則として入れません。まず障害福祉の制度から確認します。

住まいどんな場所か主な対象の目安医療的ケア
療養介護病院(筋ジストロフィー病棟など)で暮らしながら介護を受ける区分6で気管切開を伴う人工呼吸器を使う方、区分5以上で筋ジストロフィーや重症心身障害の方など病院の看護・医学的管理のもとで受ける
障害者支援施設夜は施設入所支援、日中は生活介護などを受ける入所施設生活介護を使っていて区分4以上(50歳以上は区分3以上)施設ごとに体制が違うため確認が必要
グループホーム(共同生活援助)少人数で暮らす住まい。主に夜間の介護や相談を受ける障害のある方。身体障害の方は65歳未満、または65歳になる前に障害福祉サービスなどを使ったことがある方住まいごとに確認が必要
介護保険の施設特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など65歳以上の方、40〜64歳で特定疾病がある方。特養は原則要介護3以上施設ごとに確認が必要
自宅+重度訪問介護自宅でヘルパーが長時間そばにいて介護する区分4以上で、二肢以上の麻痺などの条件を満たす方研修を修了したヘルパーがたんの吸引・経管栄養を担う。病状の管理は訪問看護・訪問診療

どの住まいも、入れるかどうかは障害支援区分だけで決まりません。空き状況、医療的ケアの受け入れ体制、本人と家族の希望を合わせて決まります。区分の認定がまだの方は、障害支援区分の認定調査で聞かれる80項目で、調査で何を聞かれるかを先に確認しておくと準備が進めやすくなります。

療養介護は、どんな人が使える?

病院への長期の入院による医療的ケアに加えて、常に介護が必要な方が対象です。区分6で気管切開を伴う人工呼吸器を使っている方、区分5以上で筋ジストロフィーや重症心身障害がある方などが該当します。

療養介護は、障害者総合支援法の介護給付の一つです。病院の中で、機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理のもとでの介護、日常生活の世話を受けます。厚生労働省は、対象者を次のように定めています。

  • 区分6の方:気管切開に伴う人工呼吸器による呼吸管理を行っている方(ALSの方など)
  • 区分5以上の方:筋ジストロフィーの方、または重症心身障害の方
  • 区分5以上の方:医療的ケアの判定スコアが16点以上の方
  • 区分5以上の方:行動関連項目等(12項目)の合計が10点以上で、医療的ケアの判定スコアが8点以上の方
  • 区分5以上の方:遷延性意識障害があり、医療的ケアの判定スコアが8点以上の方
  • 上のいずれかに準じると市町村が認めた方

区分5以上のうち、医療的ケアの判定スコアを使う3つは、2021年度の障害福祉サービス等報酬改定で、障害者支援施設での受け入れが難しい方として明文化されたものです。

筋ジストロフィーの方の「施設」として名前が挙がることが多いのが、この療養介護です。埼玉県が公表している療養介護の事業所一覧(令和8年9月1日現在)には、蓮田市の国立病院機構東埼玉病院の療養介護が「国立施設『東埼玉病院』(筋ジス病棟)からの移行」として載っています。同じ一覧のほかの事業所の多くは、重症心身障害児施設から移行した施設です。

筋ジストロフィーの方が自宅で暮らす場合の制度の組み合わせは、筋ジストロフィーの家族を自宅で支えるには?使える制度と在宅介護のはじめ方にまとめています。

障害者支援施設(施設入所支援)には、どんな人が入れる?

生活介護を使っていて、障害支援区分4以上(50歳以上は区分3以上)の方が主な対象です。夜間は施設入所支援、日中は生活介護を同じ施設で受ける形が一般的です。

施設入所支援は、施設に入所する方に、主に夜間の入浴・排せつ・食事の介護や生活の相談を行うサービスです。日中は生活介護(入浴・排せつ・食事の介護や創作活動など)を受けます。2つのサービスを組み合わせて提供する入所施設を「障害者支援施設」と呼びます。

頸髄損傷や脳性麻痺など、常時の介護は必要でも、人工呼吸器のような高度な医療的ケアが中心ではない方は、こちらが検討先になります。

注意したいのは、医療的ケアの受け入れ体制が施設ごとに違うことです。看護職員が夜間もいるか、たんの吸引が日に何回までなら対応できるか、胃ろうに対応できるかは、施設に直接確認します。体制が合わなければ、区分の条件を満たしていても入所は難しくなります。

脊髄損傷の方は、年齢と原因によって介護保険が先になる場合もあります。制度の順番は脊髄損傷の在宅介護|介護保険は使える?年齢・原因別の制度と必要な福祉用具で確認できます。

グループホームで、重い障害のある人は暮らせる?

暮らせる場合があります。日中も支援する「日中サービス支援型」などがあり、一定の条件を満たす重度の方は、グループホームの中で重度訪問介護を個人単位で使える特例もあります。

グループホーム(共同生活援助)は、少人数で暮らす住まいで、主に夜間の相談や入浴・排せつ・食事の介護を受けます。身体障害の方は、65歳未満の方、または65歳になる前に障害福祉サービスなどを使ったことがある方に限られます。

グループホームの中では、原則としてその事業所の職員が介護をします。ただし、介護サービス包括型・日中サービス支援型のグループホームに入居している重度訪問介護の対象の方などは、経過措置として、個人単位で居宅介護(身体介護)や重度訪問介護の支給決定を受けられる特例があります(厚生労働省の指定基準省令附則第18条の2。札幌市が令和6年3月4日付の通知で取り扱いを示しています)。経過措置のため、使えるかどうかと期間は市区町村に確認します。

介護保険の施設に入れるのは、どんな人?

65歳以上の方と、40〜64歳で16の特定疾病のどれかがある方です。特別養護老人ホームは、2015年4月から新しく入所する方が原則要介護3以上に限られています。

40〜64歳の方が介護保険を使えるのは、特定疾病が原因で介護が必要になった場合です。ALS(筋萎縮性側索硬化症)は特定疾病に入っていますが、筋ジストロフィーは入っていません。脊髄損傷は、交通事故や転落によるものは対象外で、後縦靱帯骨化症や脊柱管狭窄症、骨折を伴う骨粗鬆症が原因の場合に対象になります。

ALSの方は、40歳以上なら介護保険が先に来ます。介護保険と重度訪問介護をどう組み合わせるかはALSは介護保険と重度訪問介護どちらを使う?40〜64歳の併用ルールと申請の順番で説明しています。

特別養護老人ホームは、要介護1・2の方でも、やむを得ない事情で在宅生活が難しいと認められれば特例で入所できる場合があります。判断は施設と市区町村が行います。

施設に入ると、費用はどうなる?

サービスの利用者負担には所得に応じた月の上限があります。そのうえで食費や光熱水費などの実費がかかり、所得が低い方には手元にお金が残るよう減免や補足給付があります。

障害福祉サービスの利用者負担の上限月額は、厚生労働省の資料で次のように定められています。

区分世帯の収入状況上限月額
生活保護生活保護を受けている世帯0円
低所得市町村民税が非課税の世帯0円
一般1市町村民税が課税で、所得割16万円未満の世帯9,300円
一般2上記以外37,200円

ここで確認したいのが、入所施設を使う20歳以上の方とグループホームの方は、市町村民税が課税の世帯なら「一般2」になる点です。自宅で重度訪問介護を使う場合に9,300円の上限だった世帯でも、入所すると上限が37,200円になることがあります。18歳以上の方の「世帯」は、本人と配偶者で判断します。

上限とは別に、次の実費や減免があります。

  • 療養介護:医療費と食費の減免(医療型個別減免)があり、低所得の方は少なくとも25,000円が手元に残るように利用者負担が減免されます。障害基礎年金1級を受けている方などは、計算で使う生活費の額が28,000円になります
  • 障害者支援施設(20歳以上):食費・光熱水費の実費を払っても、少なくとも25,000円が手元に残るように補足給付があります
  • グループホーム:家賃に対して、利用者1人あたり月1万円を上限に補足給付があります

実際の金額は、施設の食費・光熱水費の設定や、世帯の課税状況で変わります。見学のときに、月にかかる額の目安を施設に出してもらうと比べやすくなります。

施設と、自宅で重度訪問介護を使う暮らしは、どう比べる?

「誰が医療的ケアを担うか」「夜間を誰が支えるか」「家族の生活がどう変わるか」の3点で比べます。どちらが正しいかではなく、本人の希望と、今の介護が続けられるかで考えます。

在宅を続ける場合、重度訪問介護のヘルパーが長時間そばにいて、食事・排せつ・体位変換・見守りを担います。研修を修了して都道府県に登録したヘルパーは、医師の指示のもとで、たんの吸引と経管栄養を行えます。病状の管理は訪問看護や訪問診療が担います。使える時間数は、市区町村が支給量として決めます。

比べるときは、次の表のように家族の状況を書き出してみます。

比べる点施設(療養介護・障害者支援施設など)自宅+重度訪問介護
医療的ケア病院・施設の看護職員が担う(体制は施設ごとに確認)研修修了ヘルパーが吸引・経管栄養、看護師・医師が病状管理
夜間施設の職員が対応支給量の範囲でヘルパーが入る。足りない時間は家族が担う
家族の役割面会・外出・外泊の付き添いが中心ヘルパーがいない時間の介護、事業所や看護との連絡
入るまでの期間空きを待つことがある区分認定と支給決定、事業所との契約が必要
費用の上限課税世帯は一般2(37,200円)+実費所得に応じて0〜37,200円

以下は、判断の進め方を示した検討例です。実際の利用者の事例ではありません。ご家族の状況に置き換えて確認してください。

検討例:30代で筋ジストロフィーのある方。夜間に2時間おきの体位変換とたんの吸引が必要で、母親が一人で担ってきた。本人は自宅で暮らし続けたいと話している。この場合は、①夜間を担うヘルパーが入れる支給量になるかを市区町村に相談する、②同時に療養介護の病院へ見学と相談を申し込み、空きの見通しを聞く、③その間の休息のために短期入所(医療型)やレスパイト入院を予約する、という3つを並行して進めると、どちらに決めても準備が無駄になりにくくなります。

支給量が足りないと感じるときの考え方は重度訪問介護の「支給時間」はどう決まる?足りないと感じたときの考え方、家族が休むための入院の制度はレスパイト入院って何?埼玉県の在宅難病患者一時入院事業と重度訪問介護との併用をご覧ください。施設か在宅かで迷う気持ちの整理には「施設に入れるしかない」と言われたら|在宅介護という選択肢も参考になります。

施設を探すとき、何から始めて、見学で何を確かめる?

まず相談支援専門員か市区町村の障害福祉の窓口に相談し、候補の施設を挙げてもらいます。見学では、医療的ケアの体制と夜間の人員を必ず確認します。

施設の入所も、障害福祉サービスの支給決定が必要です。サービス等利用計画を作る相談支援専門員がいれば、候補探しと申込みの段取りを一緒に進められます。相談支援専門員の役割は相談支援専門員って何をしてくれる人?サービス等利用計画とセルフプランの違いにまとめています。

埼玉県は、療養介護や障害者支援施設などの事業所について、報酬の算定体制の届出状況を一覧で公表しています。どの地域にどの施設があるかを知る手がかりになりますが、空き状況の一覧ではありません。空きと受け入れの可否は、施設に直接問い合わせます。

見学や問い合わせのときは、次の点を確かめておきます。

  • 夜間に看護職員がいるか、夜間の職員は何人か
  • たんの吸引の回数や、人工呼吸器・胃ろうに対応できるか
  • 主治医との連携と、体調が悪くなったときの受診先
  • 日中の過ごし方(生活介護の内容、リハビリ、外出の機会)
  • 面会・外出・外泊のルール
  • 申込みから入所までの見込み期間と、待つ間の短期入所の利用
  • 月にかかる費用の目安(利用者負担・食費・光熱水費・日用品)

ノベラクトケアに相談できることは?

ノベラクトケアは施設の紹介やあっせんは行っていません。自宅で暮らし続ける場合の重度訪問介護について、どの時間帯に入れるか、どんな介助に対応できるかの受け入れの見通しをお答えします。

ノベラクトケア(株式会社Noveract)は、埼玉県川越市に本社、さいたま市西区に事業所を置き、重度訪問介護を提供しています。

「施設の空きを待つ間、夜だけでも在宅で支えられるか知りたい」「施設と在宅を比べるために、在宅の場合の体制を聞いておきたい」といった段階のご相談も受け付けています。時間数は市区町村が支給決定で決めます。当社がお答えするのは、在宅の場合に入れる時間帯と対応できる介助です。

ご相談はお問い合わせフォーム、またはお電話(048-871-6572)でどうぞ。

よくある質問

筋ジストロフィーの家族が入れる施設はありますか?

障害支援区分5以上の筋ジストロフィーの方は、病院で暮らしながら介護を受ける療養介護の対象です。埼玉県の事業所一覧には、蓮田市の東埼玉病院で筋ジストロフィー病棟から移行した療養介護が載っています。医療的ケアが中心でない場合は、区分4以上(50歳以上は区分3以上)で障害者支援施設も選択肢になります。

頸髄損傷で、介護保険の施設に入れますか?

65歳以上の方は入れます。40〜64歳の方は、交通事故や転落による頸髄損傷は介護保険の特定疾病にあたらないため、原則として介護保険の施設の対象外です。後縦靱帯骨化症など特定疾病が原因の場合は対象になります。

施設に入ると、利用者負担は高くなりますか?

市町村民税が課税の世帯では高くなることがあります。入所施設を使う20歳以上の方とグループホームの方は、課税世帯なら上限月額が37,200円の「一般2」になります。食費・光熱水費は別にかかり、所得が低い方には手元に25,000円以上が残るよう補足給付があります。

グループホームでも重度訪問介護を使えますか?

使える場合があります。介護サービス包括型・日中サービス支援型のグループホームに入居している重度訪問介護の対象の方などは、経過措置として個人単位で重度訪問介護の支給決定を受けられる特例があります。使えるかどうかは市区町村に確認してください。

施設を探すときは、どこに相談すればいいですか?

相談支援専門員がいればその方に、いなければお住まいの市区町村の障害福祉の窓口に相談します。施設の入所にも障害福祉サービスの支給決定が必要です。空き状況と受け入れの可否は、候補の施設に直接問い合わせて確認します。

参考・出典

  • 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
  • 厚生労働省「障害者の利用者負担」
  • 厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(修正箇所)」
  • 神戸市「療養介護」
  • 神戸市「施設入所支援」
  • 埼玉県「介護給付費等算定に係る体制等に関する届出状況一覧(療養介護・短期入所)令和8年9月1日現在」
  • 埼玉県「介護給付費等算定に係る体制等に関する届出状況一覧(障害者支援施設)令和8年9月1日現在」
  • 札幌市「共同生活援助利用者における居宅介護及び重度訪問介護の利用について」(令和6年3月4日)
  • 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
  • 広島県「介護老人福祉施設等の入所指針について」